一見すると「カツカツ」だけど…

ここまでで、債務超過だからといって、必ずしも企業の価値が低いわけでも、すぐに倒産するわけでもないことがおわかりいただけたと思います。

確かに、赤字を出し続けて債務超過になった結果、経営破綻に至るケースもあります。しかしたとえ債務超過であろうと、キャッシュが回っていれば企業は倒産しないのです。これを見る一つの材料が流動比率です。

実際、クラウド会計ソフトを提供するfreeeや完全栄養食品をECやコンビニで展開をするベースフードなど赤字続きの企業でも、流動比率を調べてみると低いどころかむしろ高いことがわかります。

ですが、スターバックスの場合は流動比率も100%を切っています。これだけ見ると、資金繰りが苦しくて、今すぐ倒産してしまうのではと思われるかもしれません。あるいは、「そんなに株主還元をしないで、キャッシュに余裕を持てばいいのに」と思うでしょう。

なぜスターバックスは、流動比率が100%を切るほどカツカツな状態でビジネスを回しているのでしょうか?

その答えはビジネスモデルにあります。次にスターバックスの「キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)」における売上債権回転日数を見てみましょう。

市場から評価されるスタバの「虎の子」

スターバックスの売上債権回転日数は−5日です。競合のドトールの売上債権回転日数は「16日」です。つまりスターバックスの場合、売上が立つ前に入金がある状況なのです。

村上茂久『最高の教訓 倒産』(大和書房)
村上茂久『最高の教訓 倒産』(大和書房)

どうしてこんなことが起こるのかわかりますか? 実は、スターバックスがマイナスの売上債権回転日数を実現できている秘密は、同社が発行するプリペイドカードにあります。

スターバックスのFY2023の決算資料を見ると、そこには「Storedvalue card liability and current portion of deferred revenue」という、プリペイドカードに関する会計上の項目が約17億ドル(約2,470億円)も計上されています。

FY2023時点のスターバックスのキャッシュが約35億ドル(約5,000億円)であることから、プリペイドカードで受け取る金額はキャッシュの半分近くにのぼります。スターバックスがどれほど多くのプリペイドカードを発行しているかがおわかりいただけるでしょう。

なお、プリペイドカードがない場合のスターバックスの売上債権回転日数は12日。ドトールよりも売上債権の回収は早いものの、それでも2週間近くあります。一方で、プリペイドカードの売上債権回転日数は−17日。つまり、プリペイドカードにより17日分の売上が手前で入ってくるということです。結果、12日−17日で売上債権回転日数は−5日となっています。

プリペイドカードの発行額がこれほど多い理由は、おそらく「プレゼント」とも関係しているのではないかと推測します。私もスターバックスのプリペイドカードを贈ったり贈られたりした経験がありますが、スターバックスをよく利用する人には嬉しいプレゼントです。

ここまでお読みいただけば、なぜスターバックスは流動比率が100%を切っていても安全性に問題がないのかはもうおわかりですね。そう、同社は「売上債権回転日数がマイナスになるビジネスモデル」を築き上げているため、資金繰りが有利なのです。

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