債務超過でも“スタバなら安心”のワケ
日本では「債務超過=危ない企業」というイメージがありますが、実は海外では、債務超過だからといって直ちに危険視されるわけではありません。
実際、世界のファーストフード業界で時価総額ランキング1位のマクドナルドも、総資産508億ドルに対して、59.9億ドルの債務超過の状態です(2022年12月末時点)。
株主還元を積極的に行うスターバックスのファイナンス戦略には、株主に対するアメリカ企業の考え方が見え隠れしています。つまりアメリカの企業の間には、稼いだ分のキャッシュは積極的に投資をするか、さもなければ株主に還元するという考えが浸透しているのです。
さて、ここで重要になるのが、「フリーキャッシュフロー(FCF)」という概念です。つまり、企業が自由に使える現金のことですね。FCFはアマゾンがKPIに据えているくらい、ファイナンスの視点からは重要なものです。
FCFの計算方法はいくつかありますが、一番単純なのは「営業CF+投資CF」です。つまり、本業で稼いだキャッシュ(営業CF)と、投資に使ったキャッシュ(投資CF)の合計額が、企業が自由に使えるキャッシュ(FCF)というわけです。
投資家を惹きつけるスタバの戦略
このように、FCFにはすでに投資CFが考慮に入れられていることから、設備投資をしてもなお自由に使えるキャッシュということになります。スターバックスのFCFと財務CFをグラフにしたものが図表5です。
図表5を見ると、スターバックスではFCFが大きく出ると、その年もしくは翌年に財務CFが大きくマイナスになっていることがわかります。これは、自社株買いや配当を通じて株主還元を行っているのです。「お金を余らせるくらいなら、株主還元を進めて資金を効率的に使おう」というわけですね。
このようなファイナンス戦略があるからこそ、スターバックスは株式市場でも評価されているのです。実際、スターバックスの時価総額は今回用いた決算書の時期に近い2024年1月時点で1,050億ドル(約15兆円、1ドル=145円換算)前後であり、この金額は当時の日本の時価総額ランキング3〜5位の三菱UFJ銀行、NTT、キーエンスに匹敵します。
このように、債務超過だからといって企業が必ずしも危ない状況というわけではありませんし、株式市場から評価されないわけでもありません。その証拠に、スターバックスのPER(予想当期純利益が時価総額の何倍かを示す指標)は、2024年1月時点で26倍前後と、S&P500の平均PERである16〜20倍を大きく上回っています。
一般的に、企業は創業から時間が経つにつれて成長が鈍化してくるためPERは下がる傾向にありますが、創業50年を超える同社がこれだけの水準を保てているのは、積極的な株主還元をしているからだと言えます。

