20年放置されたジャンルに新風を吹き込んだ
売れなかった前作群があってこそ、2カ月という超高速での開発が可能になった。日本のゲームメディア「ゲームウィズ」のインタビューで開発者のLEMORION(レモリオン)氏とはがねいろ(HAGANEIRO)氏は、過去プロジェクトの開発資産を流用したことで、開発のスピードが向上したと説明している。
こうしたコードや素材の蓄積に加え、ジャンルの選択にも光るものがあった。ハンソン氏は、20年にわたり愛されてきたプロップハントのジャンルを、現代的にアレンジする試みがなかったと指摘。長く新鮮味がなかったエリアに、一気に新風を吹き込んだ。
試みは瞬く間にファンの心を掴んだ。コミュニティアプリのディスコードで参加者を集めたプレイテストを経て、発売日の告知に至ると、その時点でSteamのウィッシュリスト(購入希望の事前登録)は11万件に達した。ハンソン氏は、勢いは衰えることなく、発売日までに60万件にまで伸びていたと振り返る。
ここまでの爆発的なヒットを見れば、通常であればプロモーション活動の存在が想起される。巨額の広告費が投じられていたり、大手配信者に大規模な報酬が支払われていたりなどの動きだ。
だが開発者は、プロモーションに1円も投じていないと明言している。実際、米ゲーム情報サイトのゲームラントは、公式の宣伝素材は24秒の動画と数枚のスクリーンショットが「すべて」だったと指摘する。
「誰かに見せたくなる」巧妙なゲーム設計
プロモーション活動をすることなく『めっちゃカメレオン』は2026年屈指のヒットとなった。同メディアは、成功要因は口コミであったとし、少ない素材でもコンセプトが一目で伝わり、実際のプレイが期待を裏切らなかった点が大きいと分析する。
では、口コミが伸びたのはなぜか。ゲームの性質上、「共有したくなる瞬間」が次々と訪れることが大きい。米eスポーツ専門メディアのインベン・グローバルが取りあげるように、完璧に背景へ溶け込んだプレイヤーや、目の前の相手を見つけられずに右往左往する鬼を映したショート動画が、SNS上で次々とバズを生んだ。プレイするたびに思わず誰かに見せたくなる驚きと笑いが生まれ、広告に頼らずとも遊んだ人が自ら広めていくサイクルが実現した。
こうした「シェアしたくなる設計」は、とりわけ配信者に大きな影響を与えた。米ゲーム情報メディアのアフターマスは、本作のプレイヤーには創造性と機転が「あると有利」なのではなく「不可欠」だと論じ、配信者が加われば緊張と爆笑が連鎖すると評した。報酬を支払わずとも、クリエイターが自ら集まる条件がゲームの設計に備わっていたのだ。
ゴス・ゲーマーズは、この拡散パターンには前例があると指摘する。コロナ禍に世界を席巻したオンライン人狼ゲーム『アマングアス』だ。切り抜き動画のバズ、配信者のプレイ映像、そして口コミなどを通じ、プレイヤー自身が事実上の宣伝役となった。自分のプレイを見てもらいたくなるゲーム設計が、SNS時代のインディーゲームには欠かせない。

