「消費の在り方」が変わってきている
マーケターの視点から言えば、われわれ人間は商品やサービスそのものではなく、そこから得られる「ナラティブ(物語)」を消費している。かつての富裕層にとって、高価な血統書付きの犬や猛獣を飼うことは、「富と権力」というわかりやすい物語を手に入れる手段だった。
しかし、情報が透明化し、環境問題や動物福祉への意識が高まった現代において、その古い物語は「無知とエゴ」というネガティブなものへと反転してしまった。代わりに彼らが求めているのは、「地球環境の保護に貢献し、正しい倫理観を体現する」という、極めて高度でエシカルな物語である。
マーケティングの世界では、消費行動が「モノ消費(所有)」から「コト消費(体験)」へと移行したと言われて久しい。しかし、動物との関わりにおいて、世界の超富裕層はさらにその先を行く「イミ消費(意味の消費)」の領域に到達している。
彼らは単にサファリを訪れて動物の姿を楽しむ(コト消費)だけではない。自らの財力を使って生態系を保護し、そのつながりを支援するという「社会的な意義や大義(イミ)」に対して莫大な資本を投下しているのだ。
日本の小金持ちが数百万円の血統書付き犬にブランド服を着せてSNSに投稿している間、世界の超富裕層は数千万円を投じてアフリカの森を守るパトロンとなっている。
「動物を家庭に縛り付けない」「自然は所有できないと知る」という選択こそが、現代のグローバルエリートが導き出した、最も教養に満ちた動物愛と「イミ消費」の究極の形なのである。

