既存のファンコミュニティを政治化
もちろん、泉氏を取材した朝日新聞が「新党では『住民の負担減』『子ども・教育』、ITやAI(人工知能)を活用した『デジタル行政の推進』を重点政策に掲げる」と報じているように、同党が少子化対策しか扱わないわけではない。なお、重点公約は10月上旬に公表予定としている。
さて、そんなひろゆき氏と泉氏は、2023年に共著『少子化対策したら人も街も幸せになったって本当ですか?』(KADOKAWA)を出版。2025年5月22日には、泉氏の街頭演説会にひろゆき氏が駆け付け、同年6月19日には泉氏のYouTubeチャンネル「泉房穂の情熱チャンネル」にて対談の模様を公開している。新党につながる地ならしはあったのだ。
しかし、この新党の背後には、極めて現代的な構図があるように思える。従来であれば、中道改革連合がそうであったように、既存の集票組織を束ね新党をつくるという道筋が常套手段であった。が、現代の潮流は様相が異なる。一言でいえば、既存のファンコミュニティを政治化してしまうのである。
従来型の新党設立はもう限界
単純にそれぞれの得票数を足し算すれば、中道改革連合の集票力は強力に見えた。立憲民主党と公明党が持っていた票はもちろんのこと、それらを支える創価学会や労働組合などがもつ票もカウントすれば、政権交代でさえ夢ではないという楽観論も一部で飛び出していた。
同党のように、政党および集票力を有する中間団体・圧力団体などの準政治組織を、いかにして取り込むかが新党設立の鍵であり、これらの異なる政党・組織を束ねるためにも理念やイデオロギーは必要だった。
結果、建て前のうえでは、まずは理念やイデオロギーを大々的に掲げ、それに共鳴した政党・組織が集うという構図があり、一方で実態としては、異なる利害を持つ政治的・準政治的組織を「生活者ファースト」という理念で包み直したということになる。
しかし、周知のとおり、その結果は惨敗だった。その一因として右派でも左派でもない中道という概念の分かりにくさがよく指摘される。が、その指摘には「SNS時代においては」という枕詞が欠けている。高速で大量の文章が流れるSNS上では、どれほど精緻に理念を掲げても理解されにくい。
ましてや、今回は結党の前年10月まで与党だった公明党と野党第一党だった立憲民主党との連合であり、そもそも有権者を説得するのが難しかった。
それに対し、「同党は選挙互助会にすぎない」とするシンプルかつ端的な批判は、これ以上ないほどSNSと相性がよい。

