「鬼十則」よりも見直すべきこと
電通社長の石井直は、引責辞任した。
石井社長が、今後の電通のことを考え、一身をなげうって、社長自らが犠牲になり、ことを収めるつもりで辞任を選択したというのであれば、会社の方針として、経営者の考えとして理解をすべきであろう。
ただし、社長の辞任は認めるが、「鬼十則」を手帳から外してはいけない。それよりも、もっと見直すべきことがあるはずだ。
まずは、労務管理の問題。そして、もう一つ。「働く」という価値観をどう捉えているのか。
そもそも、日本人は「勤勉な、よく働く日本民族」だったはずだ。それで、ここまでの国際的地位を築いてきた。勤勉でない者が勝っている国なんか一つもない。どの階層の人たちも一所懸命働いて、世の中を築いている。そこに、たくましさが生まれてくる。
それが、「そんなに働き過ぎるなよ」という風潮に変化してしまった。
「真面目に働く価値」の不透明な行方
30年ほど前から、ILO(国際労働機関)をはじめ、アメリカやヨーロッパが「日本人は働き過ぎだ」と注文をつけるようになってきた。そのせいで、労働形態も変わってしまった。働く側の都合に合わせなければいけないという視点を置いた働きやすい制度が取り入れられるようになってきた。
同時に、「キャリアアップ」という言葉も出てきた。終身雇用から転職が好まれる流動性が発生した。働く側の個性も出てきた。
しかし、伊藤は思う。
〈どこかに何かを、置き忘れたのではないか〉
それは、日本人に本来備わっていた、真面目に働く、人のために尽くす、できる限りやってみる、個人の気持ちをもっと醸成していくという側の価値が置き忘れられたのではないだろうか。


