取り残されるシベリア
販売が全面停止されたクリミアでは、その後、販売が部分的に再開された。モスクワ・タイムズによると、国営メッセンジャー「Max」で配布されるQRコードを使って週20リットルまで購入できる仕組みが復活した。ただしコードの争奪戦は激しく、住民の一人は友人ら10人で何時間もかけて1枚を取りに行ったと同紙に語っている。
ロシア全体でも、供給は改善に向かう。モスクワ・タイムズによると、ノヴァク氏は7月21日、複数の地域がガソリンとディーゼルの購入制限を撤廃し、給油所の行列も緩和されたと表明。燃料の輸入や製油所の定期修理の先送りが効いたとして、「市場はすでに部分的に安定しつつある」と述べた。
こうした中、取り残されたのがシベリアだ。ブルームバーグによると、ノヴァク副首相は7月25日、製油所の稼働再開が進み、給油所の状況は「大幅に改善した」と述べた一方、シベリアの状況はなお厳しく、カザフスタンからの供給を含めた追加投入を協議していると明かした。
産油大国なのに外国から燃料を買う
ロシア金融大学・国家エネルギー安全保障基金のスタニスラフ・ミトラホヴィチ氏は、カタール国営衛星テレビ局のアルジャジーラの取材に対し、この危機は、「深刻だが、ロシア当局は長い間認めようとしなかった」と指摘した。対応の遅れがかえって「国民のさらなる不信」を深め、パニック買いを誘発したという。
心理的パニックが理由との指摘だが、実際にガソリンは足りていない。CNNの報道では、ガソリン生産量は国内需要を約20%下回り、製油所の精製処理量は近年で最も低い水準にある。カーネギー・ロシア・ユーラシア・センターのシニアフェロー、セルゲイ・ヴァクレンコ氏は、「修理側と攻撃側の競争で均衡が崩れつつある」と警告。「ロシアの石油産業の耐久力は、危険なほど限界に近づいている」と論じた。
欧州ニュース専門局のユーロニュースによると、7月8日にはアレクサンドル・ノヴァク副首相がプーチン大統領臨席の政府会議でディーゼル燃料の輸出禁止を発表した。ノヴァク氏は供給状況を、「厳しい」と認めたうえで、「7月の国内市場への供給を増やせる」と説明している。禁止期間は当初、7月31日までとされていた。
ブルームバーグによると、ノヴァク氏は7月25日、オムスクで記者団に対し、ガソリンの輸出禁止を生産者・非生産者ともに年末まで延長すると表明。一方、ディーゼルについては、製油所が在庫過剰に陥って処理量を削減する事態を避けるため、市場が回復し次第、解除する方針を示した。
ロシアはさらに燃料の輸入にも踏み切った。世界3大産油国のひとつが外国から燃料を買い付ける異例の事態だ。ロイター通信によれば、インドからガソリン6万〜8万トンをすでに輸入し、毎月40万トンを各国から調達する計画だという。アルジャジーラなどによると、国内向けの燃料品質基準も緩和され、低品質の燃料の流通が許可された。
メドゥーザによると、ミシュスチン首相が署名した政令により、一部の製油所は硫黄分150mg/kgまでのガソリンを流通させられるようになった。期限は2026年末までとしている。対象の燃料にはユーラシア経済連合の適合マークが付かず、他の加盟国では販売できない。

