「今日は奇数ナンバーだけ給油できます」

リットル制限や容器への給油禁止でも殺到が収まらない地域で、さらに厳しい統制が始まっている。ナンバープレートの先頭の数字が奇数か偶数かで、給油できる日が指定される「奇偶ナンバー制」だ。

先頭が奇数のナンバーの車は奇数日に、偶数の車は偶数日にのみ給油が許される。モスクワ・タイムズによると、中部のオリョール州が6月に最初にこの仕組みを導入した。

7月に入ると制度は急速に広がり、同紙によると少なくとも6地域に拡大している。イヴァノヴォ、タンボフ、ヤロスラヴリの各州も一時、導入を検討したという。

配給の方法は地域ごとにまちまちだ。ウォール・ストリート・ジャーナルは、QRコードや手書きのリストといった急ごしらえの仕組みがロシア各地で使われ始めていると伝えている。手書きの紙で需要を管理する光景は、ソ連時代の物資不足を彷彿とする。

ソ連末期の1980年代後半には、食料品や日用品を買うにも配給券が必要だった。野党政治家のボリス・ナデジン氏(63)はニューヨーク・タイムズの取材に対し、ソ連崩壊時に「食料品店の棚が空になるのを見た」年配世代には心構えがあるが、20代・30代にとって「まったくのショックだ」と語る。

メドゥーザによると、導入は少なくとも8地域に達したが、オリョール州は7月16日、1週間以上スタンドに行列ができていないとして、ナンバー制を中止した。クルィチコフ知事は「奇偶方式は有効に機能し、不合理なパニック買いをなくすという主目的を達成した」と説明している。ただし数量制限は残り、市街地では1台30リットル、幹線道路では50リットルまでとされた。奇偶制を解除したのはロシアで初のケースだ。

ロシアを走る車のナンバープレート
写真=iStock.com/blinow61
ロシアを走る車のナンバープレート(※写真はイメージです)

ガソリン20リットルでは避難もままならない

ロシア西部、ウクライナ国境に接するクルスク州。ここでは燃料不足が深刻化し、戦時下の生活や避難体制にも支障が出ている。

モスクワ・タイムズは、同州の国境沿い地区で6月から、1台あたりの給油量が20リットルに制限されたと報じた。空襲による停電が相次ぐなか、住民はポータブル発電機を動かす燃料すら確保できない。ドローンの攻撃を受けた際に車で避難しようにも、わずか20リットルでは国境地帯からの脱出はおぼつかない。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、クリミアでは闇市場が拡大し、ガソリンは1リットルあたり500ルーブル(約1050円)超で取引されていると報じる。

シベリアのチタ地方でも、48時間待ちの行列に並ぶ「順番」までもが、1回3万5000ルーブル(約7万3500円)で売買されているという。

CNNによると、イルクーツクでは闇市場でのガソリン転売で4人が罰金を科された。うち20歳の男は全国平均の約4倍の価格で販売していたという。買い手を装ったおとり捜査で摘発された。

製油所へのドローン攻撃で燃料不足が全土に広がるなか、プーチン大統領は、「一定の不足が生じているが、深刻ではないと言えるだろう」と語った。だが、制限に動いた政府自身の対応が、その言葉と矛盾している。