「夜にお料理するなんて信じられない!」

いまだにドイツでしばしば受ける質問が、

「日本の夕食は、“warm(温かい)”か“kalt(冷たい)”か?」 

最初、どういう意味だかわからなかったが、これは「料理をして温かいものを食べるのか、それとも冷たいものを並べるだけか」という意味だ。

その背景には、ドイツの夕食は伝統的に冷たいものという事実がある。

今も多くの家庭では、冷蔵庫からハムやらサラミやら数種のチーズ、ピクルスなどを出してきて、あとはパンとバター。家庭によってはサラダを作る場合もあるが、キュウリやパプリカやトマトをざっくり切ってお皿に並べるだけで、皆、勝手にそれを取り、塩などをかけていただくことも多い。

ピクルスと生ハム
写真=iStock.com/sbossert
※写真はイメージです

食後は、食器を食洗機に放り込めばおしまい。

今も多く聞かれるドイツの主婦の声は、「夜にお料理するなんて信じられない!」おかげでドイツの夜、キッチンは病院の検査室のように綺麗だ。

しかし、昔は昼餐がメインだったからこれで良かったかもしれないが、今は違う。

親はともかく、子供は朝はろくに食べず、午前中の軽食は軽視され、昼はメインの食事が欠落し、夜は伝統的に「冷たい食事」。

子供の栄養はどうなっているの? という感じだ。

そのため、多くの家庭では、最近は夜に温かい食事を摂るようになったが、それでもその熱意は、日本人が夕食にかける情熱とは比べ物にもならない。ドイツ人は、餃子や巻き寿司を作る私のことを、魔法使いのように思っている。

ドイツにも「Bento」の波は来ているが…

一方、昨今のドイツの流行は「Bento」。

高級な家庭用品を扱っている店に行くと、日本から輸入されたお弁当箱、つまり、仕切りのある、汁漏れもしない、洒落た「Bento-Box」が並んでいる。

しかし、猫に小判とはこのことで、そこに詰められるものは依然としてパンとリンゴのようで、さほど代わり映えはしない。

時に、昨夜のスパゲッティの残りなどが入っていたりするようだが、しかし、その昔、うちの娘たちがおにぎりを食べているのを見て、「冷たいライス?」と非難がましく言ったドイツ人が、冷たいスパゲッティで満足できるのか?

お弁当は、日本人の食への関心とその情熱の結晶だ。東京駅の駅弁売り場の盛況と、選んでいる人たちの生き生きした目がそれを象徴している。少々揺らしても崩れず、冷めても美味しくいただけるもの、それが長年、追及されてきたのがお弁当だ。西欧人にはちょっとやそっとで真似はできない。

ただ、それが少し行きすぎて、幼稚園児に持たせるお弁当までが、高度な技術と労力を要するものになってしまったのは、良いことなのか、そうでないのか?

最初に、「お弁当についてはよくわからない」と書いたのは、そういう意味だ。