「社員の命の危険」を利用する
営業責任者の要請を受け、マークはFacebook Messengerを使ってディエゴにメッセージを送った。ディエゴからはすぐに返信があった。「ありがとう、マーク! メッセージをいただけて光栄です。こちらはすべて順調です。法務チームがすばらしい仕事をしてくれています。今回のことは、世界をよりオープンでつながりのあるものにするための私の務めです……私にまかせてください!」
マークはこれをいたく気に入り、私たち数人にメールを送ってきた。
コミュニティを守り抜くという僕たちの基本姿勢を貫いた結果、逮捕されたディエゴの反応(「私にまかせてください!」)に、大いに励まされました。
この件を短いストーリーにまとめて僕のページに投稿してもかまわないでしょうか。Facebookのコミュニティ保護への姿勢、企業文化、技術について、多くを語っていると思います。
たしかに、「多くを語っている」とは思う。ただし、マークが考えているような意味ではない。ディエゴを留置場から救い出すことに全力を尽くすべきときに、マークはこのできごとを世界中の利用者や政府に向けた教訓に仕立て上げようとしているのだ。
実質の「麻薬の密売人を守る」宣言
マークはこんな下書きをまとめた。
ハートウォーミングなストーリーを一つ、共有させてください。
私たちのコミュニティとみなさんの安全を守るため、WhatsAppで送受信されるメッセージはすべて暗号化されています。つまり、あなたがやりとりしたメッセージは厳重に守られ、私たちプラットフォーム側も見ることができません。政府やハッカーも同様です。
あなたのメッセージへのアクセスを求める一部の国の政府はこれを快く思っていません。そして昨日、ブラジル警察はFacebookサンパウロ支社長のディエゴ・ゾーダンを逮捕しました。私たちのコミュニティの一員を守るため、Facebookにもアクセスできないメッセージの提出を拒んだからです。
ここまで読んで、私はどうしても突っこみを入れたくなった。ここにある「私たちのコミュニティの一員」とは、刑事事件の被告人――その事件の担当判事を暗殺すると脅している麻薬の密売人を指している。
エリオットはメールのなかで、〈これをコミュニティの安全と表現したら、批判を招くことになるだろう。〉とマークに指摘した。それでもマークは続きを書き進めた。

