なぜ「子持ち様」と呼ばれるのか
それが今、制度利用者の中に、育児中も生産性を上げて後々管理職になり、会社に貢献しようという人と、“ゆるい”働き方を続けたいからと責任ある仕事を敬遠する人とが出始めているのです。もし後者が大多数を占めるようになったら、会社は沈没してしまうでしょう。これでは制度自体が維持できなくなります。
最近は「子持ち様」なんて言葉もありますが、出産した女性の大多数が前者だったら誰もそんなことは言わないはずです。その意味では、改善策を打たないまま子育て中の社員の能力向上や管理職への登用など、子育てしながら能力を最大限発揮できるようにしてこなかった企業も、また「子持ち様」の共犯と言えるのではないでしょうか。
東京都だけは出生数がプラスに
先の厚労省の発表では、2025年の東京都の出生数がプラスに転じたことも報告されました。私としては、これは2015年ぐらいから東京で大卒正社員かつ既婚の女性の労働力率が上昇していることと関連しているのではないかと思っています。つまり、東京都では保育所や勤め先の両立支援制度を活用できる、恵まれた条件下にある女性が増えたということです。
子ども向け給付金や保育料の無償化拡大といった施策も功を奏したのかもしれませんが、財源が潤沢だからこそできる施策と、地方から人を吸い上げてきた結果の出生数プラスだとしたら手放しでは喜べません。これでは地方はやせ細るばかり。東京の一人勝ちは決していいこととは言えないと思います。
2月に出版した『子どもの消えゆく国で』(岩波書店)を読んでくれた人の中には、「少子化で何が困るんだ」という人もいました。「人口が増えすぎると地球によくないから、減るのは逆にいいんじゃないか」と。
地方のシステムが少子化で崩壊
そういう人は、地方のすさまじい状況を知らないんだろうと思います。このまま行けば、いずれ地方から若い人がいなくなって医療や介護、インフラなどのサービス基盤は崩壊するでしょう。
実際、東北地方では山火事の際に消防士が足りなくて延焼してしまう事件が起きています。病気の人や高齢者がいてもケアする人がいない、そんな日も来るかもしれません。都会に住んでいると、なかなかそこまで想像できないですよね。
一方で、今の若者の中には家族を持ちたいと望んでいる人もいます。私が大学で教えているゼミでは、結婚しない・子どももいらないという学生は男女ともにごく少数です。


