「AIが伸びる」神話で投資が集中

2022年11月末、米オープンAIはChatGPTを公開した。それをきっかけに、世界的なAI相場が始まった。米国では、AIの開発に必要な画像処理半導体(GPU)を設計・開発する、エヌビディアの株価が急上昇した。AIを成長分野に位置づけたマイクロソフトやメタ、グーグル、アマゾンなどの株価も上昇した。

それらの株価が急上昇すると、投資家の視線は米国外の市場に向かった。まず注目されたのは、韓国のSKハイニックスだ。同社は、世界で初めてAI開発に必要な広帯域メモリー(HBM)の量産に成功した。

米国カリフォルニア州サンノゼのSKハイニックスアメリカ本社
写真=iStock.com/JHVEPhoto
※写真はイメージです

エヌビディアのGPUに適合するHBMの供給について、SKハイニックスは世界トップシェアを獲得した。台湾では、AIチップの受託製造を行う台湾積体電路製造(TSMC)の業績期待が上昇した。それに加えて、昨年以降、サムスン電子はHBMの供給体制を整備した。

一方、SKハイニックスなどの供給力を上回るペースで、AIデータセンターの建設は増えた。韓国の株式市場では、AI向けメモリーチップのスーパーサイクルが到来するとの期待が高まった。期待は徐々に神話のレベルに高まり、投資・投機資金はAI銘柄に一極集中した。

キオクシア株が急成長した理由

韓国の個人投資家は、経済格差が深刻な中で人生の一発逆転などを狙い、一斉に両社の株を購入した。買うから上がる、上がるから買うという具合に強気心理は膨らんだ。何をやってもうまくいくと過信する人は増えた。

今年6月22日、SKハイニックス株の時価総額は2084兆6544億ウォン(約219兆円)に達し、サムスン電子を抜いて国内トップになったと報じられた。今年に入ってからの上昇率は341.9%で、サムスン電子の197.7%を大きく上回った。事実上、この2社の株価上昇が国総合株価指数(KOSPI)の上昇を牽引した。

韓国株に引っ張られるかたちで、相対的に割安感があった日本のAI銘柄に資金が流入した。筆頭格は、わが国で唯一AI関連の半導体メモリを供給できるキオクシアだ。同社は、AIデータセンターでのデータ保存に必要なNAND型フラッシュメモリと、制御ユニットを組み合わせた“ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)”の製造技術が高い。

6月中旬、韓国個人投資家のキオクシア株買いも相まって、同社の株価は一時11万2700円、時価総額は60兆円に達した。半導体製造装置メーカーの東京エレクトロン、半導体基板メーカーのイビデン、コンデンサメーカーの村田製作所なども買われ、日韓の株価の連動性は高まった。