2回目の追加説明がまずかった理由

それらの背景を十分に示さないまま、結果として佐藤氏側に主たる責任があるとの印象を与える発表となったことで、フジテレビ自身の制作責任を問う声が一気に噴出することとなりました。

なお、これは公表されている事実について佐藤氏に責任が無いと断定するものではありません。ハラスメント事案の判断は、個別の発言や行動だけで決まるものではなく、会社の責任において、事実関係を十分に調査・検討し、適切なプロセスを経て行われるべきものです。

事実関係やハラスメントの客観的評価がまだ確定していない段階で、フジテレビが佐藤氏側だけに事実上の責任を負わせるような姿勢を示したことに対し、世間や業界内からは疑問と批判の声が急速に広がりました。佐藤氏に対しては、同情の声も少なくなかったのです。

その後7月7日にフジテレビは詳細な経緯を説明する追加文書を公表します。もちろん、新たな事実が判明すれば追加説明は必要です。ただ、危機対応では、発信内容が短期間で変化すると、「十分な検討を経ずに公表したのではないか」「世論を見ながら判断を変えているのではないか」という印象を与えやすくなります。

危機管理においては、「追加説明」そのものが問題なのではありません。問題となるのは、企業の説明の軸が変わったように受け止められることです。企業が意図していなくても、「最初の判断は誤っていたのではないか」という自信のなさ、企業への信頼がゆらぎかねません。

フジテレビ本社
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「外部弁護士がダメと言ったからダメ」

今回の事件でフジテレビが責任を問われるべき理由は、組織としてどう「経営判断」したのかというプロセスの不透明さです。公式発表の中で、フジテレビは一貫して「外部弁護士による調査で問題視された」ことを処分の根拠として挙げ事由にしています。

2回目の詳細な発表でも、同社のコンプライアンス部門が外部弁護士に事実関係の調査を依頼した結果、「男性俳優の一連の言動はハラスメントと評価されるとの見解を得たため、厳重注意に至った」という経緯が説明されています。

フジテレビのリリース「当社ドラマ制作に関するご説明」、2026年7月7日(フジテレビ公式サイトより)
フジテレビのリリース「当社ドラマ制作に関するご説明」、2026年7月7日(フジテレビ公式サイトより)

しかし、問題は外部弁護士がハラスメントと評価したことではありません。企業の危機対応では、専門家の助言と経営判断は同じではありません。専門家は事実関係や法的評価など、経営判断の材料を提供する存在です。一方、その評価を踏まえ、会社としてどのような対応を取り、社会へどのようなメッセージを発信するのかを決めるのは経営者の役割です。

経営判断では、法的リスクだけではなく、出演者との信頼関係、制作現場への影響、スポンサーや視聴者への説明責任など、多様な要素を総合的に考慮する必要があります。