いくら為替介入しても円安が止まらない

2022年後半から昨年秋ごろまで、ドル/円の為替レートは概ね150円を中心に、上下10円程度の範囲で推移した。

2024年7月には、一時、1ドル=161円88銭まで円安が進んだものの、政府のドル売り介入で鎮静化させた。財務省は米財務省の理解を取り付け、日本銀行にドル売り・円買いの為替介入を指示した。当時の政権・政府は過度な円安阻止の決意を世界に示したといえる。

昨年10月、高市政権が発足した。高市首相はアベノミクスの後継者を公言し、責任ある積極財政を進めると表明した。問題は、責任の内容が明確ではないことだ。歳出増加により、財政悪化が急速に進むと警戒する投資家は増えた。

高市首相の政策で、日銀の金融政策正常化が遅れるとの見方も増えた。消費減税の議論からも分かるように、政府は減税などの具体的な財源を確保していない。プライマリーバランス(基礎的財政収支)の管理も複数年で行う方針という。財政規律は緩み、国債の発行が増える。金利上昇圧力が高まる中で、日銀の利上げや国債買い入れのペース調整は難しくなる。

海外投資家と話していると、高市首相の経済政策に関する不信感が高まっていることが分かる。政権の発足後、円売りを仕掛ける投資家が増加した要因だろう。今年4月末以降の為替介入の効果は長続きせず、6月後半、ドル/円は161円台に緩やかに下落し、7月1日には162円80銭台にまで円安が進行した。

破れた千円札と、アメリカの100ドル札を組み合わせた画像
写真=iStock.com/Ruslan Lytvyn
※写真はイメージです

日本企業・日本人の資金はどんどん海外へ

高市政権の経済政策は、わが国の経済成長期待を一段と低下させる結果を招いている。1990年のバブル崩壊後、日本経済は長期停滞に陥った。台湾、韓国、さらには中国の工業化により、国内で生産し輸出して収益を得るビジネスモデルは難しくなった。

それに伴い、日本企業の海外進出は加速した。直接投資を行い、現地生産を進める企業は増えた。経常収支の第一次所得収支(海外子会社からの配当や利息)は増加したが、そのうち半分程度が現地で再投資されている。つまり、わが国に還流しなくなっている。

生命保険会社など、典型的な内需企業も海外買収を増やした。個人の投資行動も円売り要因だ。2024年から始まった新NISA(少額投資非課税制度)を活用し、世界株式(オルカン)や米S&P500インデックスに連動する、上場投信(ETF)を購入する人は増えた。高市政権の政策は国内経済の先行き懸念を高め、資金流出を助長しているようにさえ映る。