夜になっても屋根裏温度は下がらなかった

実験の前提を整理します。実物大模型および実住宅での温度測定を行い、屋根表面、遮熱鋼板下面、断熱材上面、天井材下面、室内空気温度の推移を時系列で記録しています。測定は熱電対センサーおよびデータロガーを用い、1分間隔で取得しました。

この手法は、国土交通省の「住宅外皮性能評価法の実測指針」とも整合する一般的な方法です。また、温度測定精度は±0.5℃以内とします。

日本の典型的猛暑日を再現するため、外気温は34〜36℃、日射量は気象庁「日射量観測統計資料」(2023年、東京地点)と同程度の約800〜900W/平方メートル条件で実施します。

実験開始から数時間後、屋根表面温度は正午前後に約80℃へ達しました。これは国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)の屋根表面温度実測(2022年報告)と同水準です。その後、断熱材のみ施工の建物は、屋根裏温度は午後2時から4時にかけ45〜50℃へ上昇します。ここまでは想定内ですが注目すべきはその後です。

外気温が夕方以降に30℃以下へ低下しても、屋根裏温度は急激には下がりません。午後8時時点でも40℃前後を維持し、深夜にかけてゆるやかに低下していきました。

「断熱材だけの家」はむしろ暑い

この温度推移は、北海道大学大学院工学研究院の「高断熱住宅の夏期熱挙動解析」(2023年、日本建築学会大会学術講演梗概集)で報告された現象と一致します。同研究では、外皮断熱性能を高めた住宅ほど、日射取得過多の場合に内部蓄熱が夜間放出されると示されています。

これらの実験結果に基づいても、「断熱材単独施行の家は夏暑い」と断言してもよいと考えられます。

気象庁の「過去の気象データ検索」(2023年)によれば、真夏日の外気温は全国主要都市で35℃前後。その一方、国土交通省国土技術政策総合研究所の屋根表面温度実測データ(2022年報告)では、黒色系屋根材の表面温度は日射ピーク時に75〜85℃に達したと報告されています。

【図表1】断熱材の弱点
断熱材があっても暑い理由は熱の約75%を占める輻射熱(出所=『地球を守る! 快適な生活が手に入る!「遮熱」超入門』)

建物を通過する熱は輻射熱がもっとも多く、全移動熱量の約75%が輻射熱です。しかし屋根はそれ以上、93%もの割合を輻射熱が占めています。その結果、夏季の屋根裏では、最大で300〜400W/平方メートル級の輻射負荷が発生し、そのエネルギーが天井面を介して室内へ影響を与えているのです。断熱材のみではこの輻射エネルギーを十分に制御できません。なぜなら、何度も言う通り断熱材は「熱伝導」を遅らせる材料であり、「輻射(放射)」によるエネルギー移動を止める装置ではないからです。