「遅れてくる熱」が夜の不快感を生む
このように高断熱住宅では、外気温の変化と室温の変化にタイムラグが生じます。
断熱材単独施工の温度推移を詳細にみると、室内温度が日中のピーク時よりも「夕方から夜にかけて」上昇する場合があります。その理由は、断熱材によって熱の侵入が遅くなるため、日中に受けた熱が数時間かけてゆっくり室内側へ移動するから。
たとえば、午後2時に屋根面が最高温度に達しても、その熱の影響が室内にもっとも強く現れるのは夕方から夜にかけて、になるということです。
これは高断熱住宅で報告される「夜になっても暑さが残る」現象とも整合します。北海道大学大学院工学研究院の住宅熱環境研究(2023年)では、高断熱高気密住宅において、日射取得過多の場合、内部蓄熱が夜間放出されることが示されています。
弊社の実験データでも、午後7時以降に室内天井面温度が上昇し、体感的な不快感が増すと報告されています。夜間になっても室温が下がりにくいのは、遅れてやってくる熱の影響なのです。
また、夜間の暑さでもうひとつ見落とされがちなのが「輻射」の影響です。人は空気温度だけでなく、周囲の壁や天井の表面温度からも熱を受け取ります。たとえば夜間の空気温度が28℃まで下がっても、天井や壁の表面温度が32〜35℃であれば、人体はそれらから輻射熱を受け取っています。これにより体感温度は実際の室温より高く感じられるというわけです。
「通気性の高い家」部屋は冷えない
断熱材単独では、屋根裏で発生した300〜400W/平方メートル級の輻射負荷を根本的に遮断できません。そのため、構造体に蓄えられた熱が夜間に再輻射されているのです。この再輻射現象を「二次輻射の持続」といいます。
断熱材単独施工と遮熱材併用施工を比較してみるとその事実は明らかです。断熱材のみの場合、小屋裏温度は最大50℃近くまで上昇。一方、遮熱材を屋根直下に施工したケースでは、同条件下で小屋裏温度が10〜15℃低下したのです。
この差の理由は「輻射率の違い」であることを表しています。日本工業規格JISA1420に基づく測定で、高反射アルミ材の輻射率は約0.03とされていますが、一般的な建材の輻射率0.8〜0.9と比較すると、輻射吸収量は大幅に減少します。つまり、断熱材単独施工では、受けた輻射エネルギーを内部に抱え込んでしまうということです。
以上の条件から「夜間に暑さが残る」と感じるのは、
・壁や天井から輻射熱を受け続けている
という二重の影響によるということがわかります。
反対意見としては、「通気を強化すれば解決する」という見解もあります。しかし、国立建築研究所の通気層実験報告(2022年)では、通気のみでは輻射そのものは遮断できないと結論づけています。通気は対流熱を排出しますが、輻射反射機能は持ちません。したがって、断熱材単独施工の温度推移に見られる夜間の高止まりは、物理法則に基づく必然的帰結なのです。


