気温よりも「日光の暑さ」に注意
最大の特徴は、輻射熱が物質を介さず光速(毎秒約30万km)で移動し、物体に当たった瞬間に吸収されて熱に変換される点にあります。
太陽から地表へ届くエネルギーもこの輻射であり、真夏に日向と日陰で体感温度が大きく異なるのは、空気温度ではなく輻射熱による輻射環境の差によるとされています。気温が同じ25℃でも、直射日光下では暑く、日陰では比較的涼しく感じるのはそのためです。
人が感じる暑さ寒さは、空気温度(気温)だけでなく、周囲の壁・床・天井などの表面温度から受ける平均輻射温度(MRT:Mean Radiant Temperature)に大きく左右されます。世界保健機関(WHO)や建築学会の指針でも、室内の温熱環境評価には空気温度と輻射温度の双方を考慮する必要があるとされているのです。
建物における熱の出入りを考えると、夏季は屋根や外壁が太陽からの強い日射を受けて高温化し、その表面から室内へ輻射熱が放出されます。とくに夏季の屋根面では日射による輻射成分が支配的で、建物が熱くなる原因の大きな部分は、太陽からの輻射熱ということがわかっています。
これは国土交通省住宅局の住宅省エネルギー技術資料(2022年)における屋根面日射取得比率のデータとも整合しています。
断熱材はじつは「蓄熱材」である
そこでポイントになるのは、ほとんどの建物で使われている断熱材が主に伝導熱の移動を遅らせる材料であるということです。輻射熱そのものを止めることはできません。断熱材の役割は、熱の流れを緩やかにすることなのです。
輻射熱は電磁波として移動し、真空中でも伝播します。断熱材を使えば熱移動の一部、つまり熱が伝わる速度を遅らせることはできても、輻射に対しては本質的に無力です。断熱材自体は熱を「遮る」というより「通しにくくする」だけで、逆に「熱容量」を持つ蓄熱体としても働いてしまうのです。このことから断熱材は「蓄熱材」であるともいえます。
気温の高い夏の日などは、建物内部に一度熱がたまるとなかなか室外に放出されず、夜中まで暑いという状況になってしまいます。そこで起こっているのは、断熱材によって日中に受けた輻射エネルギーが屋根や壁体内に蓄えられ、夜間になっても室内側へ放出され続ける現象です。これはヒートアイランド下の住宅で顕著に観察されています。
実測データをもとに、断熱材単独施行の建物の温度変化をみてみましょう。弊社が実施した複数の実験でも、断熱材のみを施工した屋根構成において、日中に受けた熱が時間差で室内側へ伝わり、夜間まで温度上昇が持続する現象が明らかになっています。

