多くの観光客が使う路線も存続できず
これだけではない。北海道新幹線の札幌延伸に伴ってJR北海道から経営分離されることが確定している並行在来線の函館本線・函館―長万部―小樽間252.5kmについては、旅客営業に関して事実上の廃止を前提とした協議が進められている。
まず、2022年3月に北海道庁が主導する並行在来線対策協議会において、長万部―小樽間140.2kmの廃止とバス転換が決まった。JRからの経営分離を前提とした整備新幹線の並行在来線は、通常であれば都道府県と沿線自治体が出資する第三セクター鉄道に移管されるケースが多い。
しかし、鉄道よりバスのほうが赤字額が少ないという理由から、北海道庁は並行在来線の維持に対する財政出動に難色を示し続けた。財政規模が脆弱な沿線の自治体だけでは、鉄道の維持費を負担できるはずもなく、首長たちは鉄道の廃止について苦渋の決断を迫られた。
特に、余市―小樽間では1日の輸送密度が2000人を超えている区間であり、余市駅はニッカウヰスキーの最寄り駅として、新千歳空港からの観光客の利用も多い区間だ。JR北海道が「単独では維持困難」と発表した路線はいずれも輸送密度が2000人未満の線区であり、余市―小樽間の輸送密度は通常では廃止になりえない水準だ。
輸送を担うバス会社への根回しはなかった
しかも、廃止の決定は密室協議の場で行われ、地元のバス会社に事前の相談はなかった。こうしたことから、沿線にバス路線網を展開する「北海道中央バス側は激怒しているようだ」と当時の余市町関係者は漏らしていた。
北海道庁は、この後、机上の代替バスプランを作成し、2024年の協議会で初めて沿線のバス会社に提案を行うが、説明を受けたバス会社は、一様に道庁が示したバス転換プランの実現は困難であるとの姿勢を示し、協議は難航している。
さらに、函館本線の長万部―小樽間は2000年の有珠山の噴火で、貨物列車の幹線ルートである室蘭本線が不通となった際に、貨物列車や特急列車の迂回ルートとして活用された路線でもあり、有珠山はおおむね20~50年の周期で噴火を繰り返している。
また、函館―長万部間についても、貨物機能は残して旅客列車は廃止とする方針で、現在、新幹線アクセス路線となっている函館―新函館北斗間についても、道庁はバス転換を視野に入れた計画の策定を進めている。

