日本全体の世帯所得は減っていく運命…
「報告書」にはその説明はありませんが、理由は高齢化によって労働市場から離脱する世帯が増えているからでしょう。
再分配前所得には年金収入は含まれないので、退職して家計が年金のみに依存するようになると世帯所得はゼロになります。その結果、企業がいくら賃上げしても、日本全体の世帯所得は減っていくのです。
国立社会保障・人口問題研究所(IPSS)の2023年推計では、人口に占める65歳以上の高齢化率は2070年まで上昇します。
これから40年以上にわたって、労働市場から富を獲得できないひとたちが増えていくのです。
日本経済についての議論では、賃上げがインフレ率を上回って実質賃金がプラスに転じることが重要だとされています。これはもちろんそのとおりですが、たとえ実質賃金が増えても、高齢化によって社会全体の世帯所得は減っていきます。これが、日本の未来の“不都合な現実”です。
なおこの調査の対象は所得のみで、資産は含まれていません(株式の配当や不動産の賃料などの収入は所得に算入される)。再分配前所得が50万円未満でも、都心のマイホームなどで大きな資産を保有している世帯があるでしょうし、所得1000万円以上でも多額の住宅ローンを抱えて純資産がマイナスの世帯もあるはずです。
その意味で、日本社会の富の分布の正確な縮図ではないことには留意しておくべきでしょう。
平均的な世帯の実質所得は283万7000円
次に、世帯あたりの社会保障の拠出と給付の関係を見てみましょう。拠出は税と社会保険料(年金と医療・介護保険料)、給付は「年金・恩給」「医療・介護」「その他」に分けられます。「年金・恩給」は現金給付で、ここには児童手当、雇用保険、生活保護なども含まれます。「医療・介護」と「その他」は現物給付で、「その他」には保育などが含まれます。
図表2にあるように、再分配前の世帯所得の平均は384万8000円で、そこから税金(12.5%)48万2000円と社会保険料(13.7%)52万9000円を拠出しているので、平均的な世帯の(税・社会保険料を除いた)実質所得は283万7000円になります。
それに対して「年金・恩給」116万2000円、「医療・介護」43万5000円、「その他」24万4000円の合計184万1000円を受給していて、実質所得に現金支給・現物支給の受給を加えた「再分配所得」は467万7000円です。
このように、世帯の平均で見れば、再分配によって384万8000円の所得が467万7000円へと82万9000円(21.5%)増えています。税・社会保険料の拠出計101万1000円に対して、184万1000円を受給しているのだから、差し引きで83万円、拠出額に対して82.3%多く受給しているともいえます。


