頑丈な建物なのに価値が下がるワケ

日本の建築基準はオーバースペックといえるほど厳しく、阪神・淡路大震災でも、報道では倒壊したビルや高速道路が何度も映し出され、地震が来れば鉄筋コンクリート造でも崩れるという印象を持っている方も多いと思うが、実際には鉄筋コンクリートのマンション本体が倒壊したケースはごく一部だった。

書影
滝島一統『その家、買ってはいけない』(PHP新書)

燃えたのは木造密集住宅地であり、マンションの軀体は地震にも相当な強度を持っている。1981年の建築基準法改正以降に建てられた「新耐震」のマンションであれば、震度6強から7の大地震でも倒壊しないように設計されている。では何が持たないのか?

防水・給排水管・内装の設備類だ。これらを定期的に修繕さえすれば、軀体は長く使い続けられる。にもかかわらず日本でマンションの建て替えが進むのは、軀体の限界ではなく別の理由による。日本の住宅ローンは建物の築年数に応じて融資評価が下がる仕組みになっており、一定の築年数を超えると住宅ローンが組みにくくなる。

建て替えでも解決できないマンションの壁

ローンが組めなければ買い手が絞られて物件の流動性が低下する。「設備さえ直せばまだまだ使える建物を、融資の仕組みが壊す方向に誘導している」――これが現実だ。建て直したほうが経済的にはプラスになるから、国としても住宅をなるべく建て直す方向に持っていきたい、という意向もあるだろう。

そうした事情を踏まえたうえで、建て替えという選択肢を見てみよう。これが容易ではない。

建て替えには現行法で区分所有者の5分の4以上の賛成が必要だ。2025年に改正法が成立し、条件によっては4分の3以上の賛成でも可能だが(2026年4月に施行)、4分の3への緩和は耐震性不足など一定の要件を満たす場合に限られる。

賛成と反対のカード
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仮に4分の3が適用されたとしても、4分の1を超える反対があれば話は進まない。200戸のマンションなら50人以上の反対で止まる。なぜ反対が出るのか。建て替えを決議してから竣工まで10年程度はかかるのが一般的だ。

建物を壊す工事が始まれば、住民は仮住まいへの転居を余儀なくされる。高齢になってからの引越しは体への負担も大きく、仮住まいの手配も自分でしなければならない。自分たちが生きている間さえ持ってくれればいい、という高齢者もいるから、反対する住民は必ず出る。