陰で私腹を肥やす悪徳理事長の手口
たとえば、自分が懇意にしている不動産業者にその情報を流して、マンションの売却を持ちかけてもらう。修繕積立金を滞納している住民はお金に困っていると考えられるから、売却に応じる可能性は高い。それで売却が成立すれば、不動産業者から理事長の懐にバックマージンが入る、という寸法だ。
また、修繕工事の発注先を決める際に、業者から謝礼を受け取るケースも後を絶たない。本来4000万円で済む工事を5000万円で発注し、差額の一部が謝礼として理事長の手に渡る。これを外部から確認する手段はほとんどない。小さな不正が見過ごされる環境では、やがて行為はエスカレートする。発見リスクの低さと金銭的誘因が重なることで、不正は構造的に拡大していく。
こうした問題が積み重なっていくと、管理組合は正常に機能しなくなっていく。理事会が仲間内で固まり、住民の意見が届かない。修繕の判断も発注も不透明なまま進む。そうしたずさんな管理が続いた結果、管理会社から「契約を更新しない」と言われることがある。
住民や外部に向けては、「管理費が足りないから管理会社が撤退した」と説明されることが多いが、実態は必ずしもそうではない。マンション管理は毎月安定した収入が入るうえ実務もそれほど多くはなく、管理会社にとって手放しがたい仕事だ。それをわざわざ放棄するということは、管理組合の対応に問題がある場合も少なくない。
銀行から敬遠され、不動産価値が下がる
理事長にまともな話が通じない、管理会社に対して細かなクレームが絶えない――「お金の問題ではなく、人間の問題」という場合が多いのが実態だ。管理会社が撤退したマンションは、管理組合による自主管理に移行する。自主管理という選択肢が一概に悪いわけではなく、実際に適切に運営されているマンションも存在する。
しかし問題なのは、銀行や不動産業者が「自主管理=やばい物件」という目で見ることだ。何か問題があるマンションというレッテルが貼られるため、自主管理のマンションには融資をしない銀行もある。融資がつかないということは、買い手は現金で買える人に限られるため、価格は下がらざるを得なくなる。
こうして、管理会社から断られて自主管理になったマンションは、業界内でも「あそこは注意したほうがいい」との情報が出回っていく。
管理が機能せず、修繕も滞り続ければ、マンションはどうなるのか。
その前に一つ、多くの人が抱く疑問に答えておきたい。「マンションはいったい何年住み続けることができるのか」という疑問だ。私の見立てでは、日本のマンションの?体自体は、適切に維持管理すれば100年でも200年でも持つ。

