※本稿は、福原たまねぎ『世界の一流が休むためにやっていること』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
生産性を上げる時間の使い方
初めてシアトルのオフィスに来た日のことは、今でもよく覚えている。
開発チームが、みんなとびきり若かった。平均年齢は26、27歳ぐらい。一番年上の親分肌のエンジニアがようやく30歳を迎えたというぐらいで、他のエンジニアは大学や大学院を卒業したばかりのツヤツヤの新人ばかりだった。「エンジニアが若い」ということ自体は珍しいことではないかもしれない。けれどそんな若い彼らが世界20カ国以上で使われるシステムを開発しているという事実は、驚きだった。
彼らは百戦錬磨のエリートではない。仕事を始めて数年といったレベルで、そこまでの経験もなければ磨き上げられたスキルもない。なのに生産性は極めて高い。では一体なにが生産性を上げているのか? それは「時間の使い方」に尽きる。
シンプルで大胆な時間の使い方で集中力を発揮し、短時間のうちに成果を出す。その基本原則が非常に高い水準で徹底されていた。
集中力は「鍛える」ではなく「招く」
そもそもの前提となる話をしたい。仕事の成果を大きく左右するのは「集中力」だ。
時間が溶けてしまうような集中力を発揮して、上司にとてもほめられたり、お客さんに喜んでもらったりした経験をした人も多くいるんじゃないだろうか。夢中で作り上げた企画資料が受注につながったり、何時間もデータとにらめっこしたことで浮かんだアイデアが社内で称賛されたり。大きな成果を出せたときには、決まってキリリと高められた集中力の存在がある。
逆も然りで、意識があちこちに移ってしまい注意が散漫になっている状態では、満足のいく成果が出ずモヤモヤした気持ちになる。だらだらとスマホを見たり、散発的に誰かに話しかけられたりして仕事が中断する。時間だけが過ぎ、「今日も終わりそうにない……」と吐息をつきながら遅くまで仕事を続ける。
「フロー理論」で有名な心理学者ミハイ・チクセントミハイの研究やその後の研究では、深い集中状態(フロー)に入ると、通常より高いパフォーマンスや創造性を発揮することが示されている。逆にマルチタスクで集中力が生まれない状態だと、生産性が40%も下がったという研究もある。大げさではなく、集中力がこれほどまでに仕事の成果を変えるのは、実感として理解できるのではないだろうか。
とはいえ「集中して仕事に取り組む時間がなかなか取れない」という人もたくさんいると思う。ではどうすればいいのだろうか? アメリカで働いて気づいたのは、集中力は鍛えるものではなく「工夫」によって招くということだ。

