人間は「足手まとい」になった
ところが、2005年頃には、その時代は終わりました。コンピュータ単独のほうが、人間とコンピュータのチームよりも強くなってしまったからです。
人間が加わることが、むしろ足手まといになってしまったからです。
アルトマンさんは、この歴史をふりかえり、人間がコンピュータに初めて負けてから、「協働の時代」を経て、コンピュータ単独が最強になるまで、わずか8年ほどだったと述べています。
これを今のAI全般に当てはめると、少し不安になります。「AIを使いこなせる人材が求められる」と言われていますが、その期間は意外と短いかもしれません。
今は「AIを上手に使える人」が重宝されていても、ある時点で、「AIを使いこなす人間」より「AI単独」のほうが優れた成果を出すようになる。チェスで起きたことが、他の領域でも起きる可能性を、否定できません。
もちろん、チェスと現実の仕事は違います。チェスには明確なルールがあり、「正解」が存在します。勝ち負けがはっきりしています。
だからこそ、コンピュータが圧倒的に強くなれました。
「正解がある」領域から人間を追い抜く
一方、現実の仕事の多くは、そこまで単純ではありません。
正解がひとつに決まらないことも多いですし、その仕事にあった価値観や好みが入り込むことが、いい成果に結びつく場合もたくさんあります。人間関係も複雑に絡み、感情への配慮も必要になります。
そうした領域では、まだしばらく人間の出番があるでしょう。
ただし、「正解がある」領域から順番に、AIが人間を追い抜いていくことは間違いありません。
たとえば、経理です。
数字の計算や仕訳には正解があります。法務もそうです。法律の解釈や契約書のチェックにも、ある程度の正解があります。
特許出願も過去の特許との類似性判断に明確な基準があります。こうした領域では、すでにAIのほうが精度が高くなりつつあります。
「自分の仕事には正解がないから大丈夫」と思っている人も、油断はできません。
今は正解がないように見える仕事でも、AIの進化によって「実は正解があった」と判明するかもしれないからです。


