「身体性」を伴う仕事の価値が上がる
こうした「身体性」を伴う仕事は、AIには置き換えられません。そして、これらの仕事の単価は、今後上がっていくと私は考えています。他の多くの仕事がAIで効率化される中で、「人間にしかできない仕事」の希少価値が高まるからです。
今、ベビーシッターの時給は、東京都では2500円から3000円程度です。でもこれが5000円、6000円になっても不思議ではありません。英語ができるシッターさんは、すでに時給6000円になっているという話も聞きます。
看護師の仕事を考えてみてください。医療分野では画像診断はAIがするかもしれませんし、薬の処方もAIが提案するかもしれません。
ただ、患者さんに寄り添い、不安を和らげ、日々のケアをする仕事は人間にしかできません。看護師の仕事の重みは増すはずです。
医師も同じです。診断という「頭脳労働」がAIに移ることで、医師の仕事の中身も変わるかもしれません。
コールセンターはどうでしょうか。「よくある問い合わせ」はAIに置き換わります。
ただ、コールセンターの問い合わせはクレーマー、感情的になっている顧客も少なくありません。ですので、「やばい」案件だけは人間が対応することになるかもしれません。
それはそれで過酷な仕事になるのでコールセンターの仕事も時給が上がる可能性はあるでしょう。
「AIと人間が協力する仕事」の未来
ここまで、「消える仕事」と「残る仕事」について見てきました。
では、その中間にある「変わる仕事――つまり、AIと人間が協力して行う仕事」はどうなるのでしょうか。
「AIを使いこなせる人材が求められる」「AIと協働できるスキルが重要だ」――最近、こうした言葉をよく耳にします。AIにすべてを任せるのではなく、人間がAIをうまく活用して成果を出す。そんな働き方が、これからのスタンダードになると言われています。
ところが、OpenAIのCEOであるサム・アルトマンさんは、興味深い指摘をしています。AIと人間の協働が効果を発揮する期間は、実はとても短いかもしれないというのです。
彼が例に出したのはチェスです。
1997年、IBMが開発した「ディープ・ブルー」というコンピュータが、当時の世界チャンピオンであるガルリ・カスパロフさんに勝利しました。「コンピュータが人間のチェス王者を破った」というニュースは、世界中に衝撃を与えました。
その後、「アドバンスドチェス」という新しい形式が生まれました。
人間とコンピュータがチームを組んで戦います。人間の直感や創造性と、コンピュータの計算力を組み合わせたのです。
この形式は、しばらくの間、最強でした。コンピュータ単独よりも、人間単独よりも、人間とコンピュータのチームが一番強かったのです。

