一度だけ食べた「犬肉」の味

中国や韓国、東南アジアの一部で密かに、あるいは堂々と食べられている犬肉。台湾や香港、シンガポールなどでは犬肉の販売は禁止されているが、中国ではまだ禁止されているわけではない。実は、私も一度だけ食べた、というか、知らないうちに食べていた経験がある。

中国の肉市場
写真=筆者撮影
中国の肉市場には、日本では見かけない肉がズラリ…

05年か06年頃だったので、かなり前のことになる。場所は中国の東北部、吉林省延辺朝鮮族自治州琿春フンチュン市の郊外だった。

私は03年にNHKで放送された韓国ドラマ『冬のソナタ』にハマって以来、中国語、広東語に続いて韓国語の勉強を始め、その延長で2000年代前半から中盤にかけて、韓国人の先生がガイドしてくれる韓国のスタディツアー(年に一回)にほぼ毎年のように参加していた。

いつもは韓国の地方都市を見て回り、韓国現代史の勉強(たまに韓国ドラマのロケ地巡り)をするのだが、その年は中朝国境を歩くという数日間のツアーだった。そこで訪れたのが同自治州琿春市。ここは自治州の東端にあり、北はロシア、南は北朝鮮で、日本海にもかなり近い。中国の少数民族である朝鮮族が多く住んでおり、中国語だけでなくハングルが通じる人がかなりいる。

中華風のビーフシチューのような感じ

そんな町のレストランで犬肉を食べた。そのレストランは中華風韓国料理というか、中華料理と韓国料理の両方のメニューがある店で、韓国人の先生が私たちのために適当に料理を注文してくれた。

でも、その日に限って、先生は何やらニヤニヤ……。「何か魂胆があるんじゃないですか」と皆で言いつつ、先生が注文した煮込み料理をお皿に取り分けた。

「これは鶏肉ですか? 豚肉? 牛肉?」

誰かがそう言いながら、肉を恐る恐るつまんでみたが、先生は何も言わないで笑うばかり。でも、他の人が「うん、なかなか美味しいですよ」というので、私も口に運んでみた。それが……犬肉だった。

野菜と一緒にグツグツ煮込んでいるので、中華風のビーフシチューのような感じで違和感はない。

肉も小さめで調味料の味が濃いので、正直なところ、はっきりとした味はわからなかった。鶏肉のようなパサパサした食感ではなく、強いクセもない。すごく美味しいというわけではなかったが、お腹が空いていた私はつい二口か三口食べてしまった。

全員が口をつけたあと、先生が「これは犬ですよ」と白状。全員が「え~っ」とのけぞったが、すでに料理のほとんどは平らげてしまった後だった。私が犬肉を食べたのは、後にも先にも、このとき一度きりだ。