他国で同じ環境を再現するのは困難
基地や地理的条件だけではない。長年築いてきた運用基盤そのものにも大きな価値がある。
トランプ氏が問題視してきた思いやり予算は、在日米軍の運用経費の一部を日本が肩代わりする制度だ。1978年度から在日米軍基地で働く日本人従業員の労務費(人件費)の一部を負担することとなり、その後、対象範囲が段階的に拡大された。現在では人件費に加えて施設設備費や水道光熱費、訓練移転費にまで及んでいる。
基地の運用には土地に加え、港湾施設、航空施設、道路網などが欠かせない。用地の確保も関連インフラの整備を担うのも日本の役割だ。
さらに、自衛隊と米軍は長年にわたり共同訓練や共同運用を積み重ねてきた。指揮統制や後方支援の仕組みも数十年かけて構築されている。
米国は近年、フィリピンとの基地利用協力やオーストラリアとの共同訓練を拡大している。だが地理的条件、インフラ、運用実績を兼ね備えた在日米軍の現在の環境を別の地域で再現するのは容易ではない。
フィリピンは台湾南方のバシー海峡に近いという利点を持つ。一方、日本と比べると基地機能や後方支援能力には差がある。オーストラリアは広大な訓練空域を持つが、台湾海峡や朝鮮半島からは距離がある。
こうして見ていくと、日本が金額だけでは捉えきれないものを米国に提供していることがわかるだろう。
米軍と自衛隊の連携は緊密化した
米国が同盟国に一層の負担を求めるのは今に始まったことではない。第一次トランプ政権は駐留経費の大幅な肩代わりを迫り、近年はそれに加えて、各国自身の防衛費をGDP比でどこまで高めるかへと要求の力点を移してきた。その水準は2%から段階的に引き上げられ、とうとう3.5%へと至った。
同盟国との協力をさらに深めようとする米国の方針は、日本にも大きな影響を与えている。
冷戦期の日米同盟では、日本は国内の基地を米軍に提供し、その前方展開を支える側面が大きかった。しかし近年は、自衛隊と米軍が一体となって抑止力を支える方向へ重心が移りつつある。
その流れは、いくつかの動きに表れている。指揮統制の面では、2024年の日米首脳会談で「指揮・統制の枠組みの向上」が打ち出され、平時から有事まで自衛隊と米軍の作戦連携を高める取り組みが進む。防衛態勢整備の面では、南西諸島で陸上自衛隊の沿岸監視部隊や地対艦ミサイル部隊の配備が進められている。また、離島防衛やミサイル対処を想定した日米共同訓練も拡大している。

