背景には中国との終わらない競争がある
前提として、米国による防衛費増額要求の背景には、中国との長期的な競争がある。
中国は海軍艦艇、航空戦力、ミサイル戦力の増強を進めてきた。台湾周辺では軍用機や艦艇による活動が活発化し、南シナ海では人工島の軍事利用も進む。こうした動きに対し、米国は国家安全保障戦略や国防戦略において中国を主要な戦略的競争相手として位置付けてきた。
近年の米国は、中国への対応に加え、欧州ではウクライナ支援、中東ではイランとの軍事緊張が続いている。複数の地域で安全保障上の課題を抱えるなか、同盟国に防衛力の強化を求めるとともに、インド太平洋の同盟国やパートナー国との防衛協力も深めてきた。
ヘグセス長官の3.5%要求も、こうした構図のなかで打ち出された。同盟国に求められているのは、自らの防衛力を高め、地域全体の抑止力に貢献することである。
ここであらためて見るべきは、トランプ大統領が言うように日米同盟が本当に米国にとって「不公平」なのかどうかだ。
日米同盟は、日本と米国がそれぞれ異なる役割を担いながら、安全保障上の利益を共有する関係として発展してきた。負担額や防衛費といった数字ばかりが注目されると、その役割分担は見えにくくなる。米国側の今回の要求が妥当なものかを検討するために必要なのは、「双方が何を提供し合っているのか」という視点のはずだ。
米軍が日本に基地を置く本質的理由
日米同盟については「日本は米国の軍事力によって守られる側である」といった語り口が多い。トランプ大統領の「我々は日本を守らなくてはならないが、日本は我々を守る必要はない」といった発言は、その典型である。だが見落としてはならないのは、米軍にとっても日本が重要な活動拠点となっていることだ。
在日米軍は約5万~6万人規模の兵力を維持し、陸軍、海軍、空軍、海兵隊などが展開する。嘉手納基地は米空軍の主要拠点として機能し、岩国基地と三沢基地は航空部隊の運用を行い、佐世保基地は艦艇運用や後方支援を担っている。
横須賀には第7艦隊の中核部隊が配置され、米海軍の前方展開空母の母港として長年運用されてきた。他の空母が米本土を母港として展開するのに対し、横須賀の前方展開空母は第7艦隊の即応態勢を支える特徴を持つ。
地図を広げると、日本列島が持つ意味はさらにわかりやすい。朝鮮半島、台湾海峡、東シナ海、西太平洋へアクセスしやすい位置にあり、部隊や装備の展開拠点として利用しやすい条件を備えている。
軍事力を支える要素には、装備の数だけでなく、部隊配置や展開速度も含まれる。危機発生時に迅速に対応できる態勢は、抑止力そのものに影響を与える。台湾海峡や朝鮮半島で緊張が高まれば、在日米軍基地は部隊運用の重要拠点となる。
