「ダル」「ヤバ」ですべてを済ませる
同じ先生によれば、これ以外にも、乱雑な言葉しか使わないため、相手を理解できていなかったり、誤解を生じさせたりする子が増えているとのことです。
もう一つ目立つのは、子ども本人はコミュニケーションに苦手意識がなくても、雑な言葉でしかやり取りしていないために、相手とわかりあうことができていないというケースです。
こういう子の特徴は、「Aって家でヤバいらしいよ」とか「Bってクラブで無双してるんだって」という雑な表現をすることです。そこに深い思考がないので、教員に何がヤバいのか、何を無双しているのかと聞かれても、ちゃんと答えられない。つまり、相手のことを理解していないのです。
また、乱暴な言葉はまわりに余計な威圧感を与えます。教員にちょっと注意されただけで平然と「ダルっ、死ね」と言ってきたり、ほんの少しミスをしただけで「死にたい」などと言ったりする。
これではまわりがその子と仲良くやっていきたいと思ってもできません。雑な言葉ばかりを使うことで、自分自身で他人を遠ざけてしまっているんです。
相手の人間性や感情をきちんと理解していなければ、なんでもないところで誤解が生まれてしまいます。
たとえば、C君がD君の性格や考えをよく知らないままつきあっていれば、D君がよかれと思ってした注意を「悪口を言われた」と間違って受け取るかもしれません。あるいは、EさんがFさんと一面的なつきあいしかしていなければ、これまで知らなかった別の側面を見たときに、「Fさんに裏切られた」と感じるでしょう。
言葉でしっかりとした絆を作り上げていなければ、両者の関係が壊れるのもあっという間なのです。これが彼らにとっての生きづらさになっていくことは容易に想像がつくと思います。
中学で不登校になってしまう子の共通項
神奈川県の中学校に勤める男性教員によれば、人間関係がより複雑になる中学では、こういう子たちは不登校や別室登校になる傾向があると言います。
先生の言葉です。
いまの中学では、クラスに数人は教室に入ることに不安を感じて別室登校をする子がいます。学校には来られるけど、クラスメイトの中にいるのが苦手なので、別の教室で自習をしたり、校長室で給食だけを食べて帰ったりする。そういう子ほど物事を丁寧に言葉で考えて、伝えることが不得意という印象があります。
こういう子たちの多くは、中学卒業後は、通信制高校へ進学します。授業はすべてオンラインなので、人と接しなくていいので楽なのです。ただ、不安なのは彼らが社会に出た後です。一時しのぎで通信制へ行ったとしても、実社会に出たときに対応できるかどうかは別の話ですから。
通信制高校の人気は増加の一途をたどっていて、現在は高校生の10人に1人が通信制高校に通っています。全員が全員、ことばの力の問題を抱えているわけではないにせよ、先生方の話によれば一定数いることは間違いないようです。
