「あの子は自分と絶対合うわけない」
ところが、学校の先生によれば、近年は言葉を適切に使用できないことで、集団の中に溶け込むことができず、一方的にそこから離脱する子が増加しているといいます。
東京都の小学校に勤める男性教員は次のように話します。
他人と接することに苦手意識を抱く子どもは年々多くなっていますね。小学校に上がってきた段階で、どうすれば他の子たちとうまくかかわっていけるのかということがわかっていないのです。
人はそれぞれ価値観も経験も考え方も違うので、話しあうことによって違いを認めてわかりあうところからでしか始まらないじゃないですか。でも、相手と口をきく前から、「あの子はこういう人間だから自分と絶対に合うわけがない」と想像だけで決めつけて、はじめからかかわろうとしない子が一定数いるんです。
あるいは、他人との間に誤解が生まれたら、ちゃんと話しあわなければそれを解くことはできませんよね。自分についてどう思っているのか、その理由は何かと確かめなければならない。でも、そういうことをせず、一足飛びに「私は嫌われた。もう居場所がない」と思い込んで、学校に来なくなる。
どちらの子にも共通するのは、人づきあいの基本である他者と言葉を介して理解しあうということを最初から放棄してしまっている、あるいはそれをする力が極めて弱いということです。本来は幼い頃から他人と公園で遊んだり、一緒に何かに挑戦したりしながら、そういう力をつけていかなければならないのに、機会が乏しいゆえに、他人とどうかかわっていいのかわからないのです。
遊びの約束も「先生、代わりに言って」
こういう子どもたちの大半は、幼い頃から自分の力でコミュニケーションを取らず、まわりの大人に代わりにやってもらう傾向にあるといいます。友達の輪に入るときも、仲直りするときも、遊びの約束をするときも、なんでもかんでも親や保育士にやってもらっている。
小学校に進学した後も、こういう子は同じことをします。中には、友達と遊ぶ約束をすることですら「先生代わりに言って」と頼る。
保育園や幼稚園と違って、小学校の先生にはそうしたことまで代行する時間の余裕はありませんし、親がいちいち出しゃばればまわりの子から煙たがられます。
ゆえに、彼らは小学校の早い段階から人づきあいに苦手意識や恐怖心を抱くようになります。それが先述のような、人とかかわることをはじめから諦めてしまったり、勝手な思い込みを膨らましてしまったりする行為につながるのだそうです。

