海外で4.5万人を動員する人気ぶり

彼が創りだしたシティポップは確かに世界でブレイクしている。

起爆材とされる曲、松原みきの「真夜中のドア~stay with me」(79年)は2020年頃、世界的にサブスクリプションのチャートを駆け上がった。Spotifyで約4億9000万回再生(6月17日時点)。かなりのヒットだ。他にも山下達郎、竹内まりや、シュガー・ベイブ、杏里、高中正義、吉田美奈子、荒井由実といった人たちの曲がシティポップとして世界で人気を集めている。

近頃、海外でコンサートを成功させたのが高中正義と杏里だ。ふたりは「ミュージック・アワード・ジャパン」の期間、一緒にライブを行った。その時の記事がある。

「高中さんは3月から4月にかけ、ロンドンやニューヨークなど計8都市を巡るワールドツアーを開催し、4万5千人を動員。ANRIさんもニューヨークでの単独公演などが盛況だった。この日、ANRIさんは『CAT'S EYE』『悲しみがとまらない』などを熱唱。赤いスーツに身を包んで登場した高中さんは『THUNDER STORM』『BLUE LAGOON』などを披露し、メロディアスで伸びやかなギターの音色を響かせた。高中さんは今夏にもロンドンで演奏する機会があることを明かし、『僕たちはまだ夢が終わってなくて、楽しいロンドンに行ってきます』などと話していた。」(高中正義さんとANRI(杏里)さん 合同で公演 シティポップ人気で再注目 2026年6月12日 朝日新聞デジタル

ロンドン、ニューヨークのツアーで4万5000人の集客といったら、現地でも注目されたことだろう。

『SPECIAL LIVE A Tribute to EIICHI OHTAKI』の様子
写真=MUSIC AWARDS JAPAN 実行員会プレスリリースより
『SPECIAL LIVE A Tribute to EIICHI OHTAKI』の様子

経済成長期の「日本の輝き」を感じさせる

シティポップの海外人気については2010年代後半からのサブスクやSNSの普及が背景にある。過去の作品が簡単に聴けるようになった時、インフルエンサーが「都会的で洗練されたサウンドとノスタルジックなメロディ」を持つ日本人アーティストに目をつけたことになる。シティポップをブームにしたとされる韓国人DJのナイトテンポはその魅力を「経済成長を続けていた当時の日本の輝きを感じさせる」点にあると語っている。(林哲司のシティポップ論 「日本の哀愁を世界が求めた」2023年8月1日 日本経済新聞電子版

同じ記事内でアメリカで受け入れられた点について、「真夜中のドア~stay with me」、杏里「悲しみがとまらない」の作曲家、林哲司はこう言っている。

「米国のヒットチャートを席巻してきたヒップホップのようなグルーブ感で聴かせる曲が少々飽きられ(往年のシティポップのような)メロディー志向に回帰しているとも感じます」(同上)

韓国人DJが感じた「日本の輝き」とは高品質を追求する日本のモノづくり産業による経済成長から生まれたものだ。シティポップのサウンドは自動車、精密機械と同じように精緻さ、高品質を求めたミュージシャンが創りだし、世界へ出て行った。シティポップは日本からの輸出品で、大滝詠一はシティポップというジャパン・メイドの輸出できるソフトコンテンツを作った。彼が再び脚光を浴びたのは日本経済に貢献し、かつ、世界に日本文化を輸出したからだ。