創るではなく育てる

「これまで多くの業態をつくってきましたが、私がつくった業態で50年続いた業態はまだないです。一方で、資さんうどんは創業50年。これはすごいことですよ。私の経歴なんか足元にも及びません」

インタビュー時は終始、資さんうどんへのリスペクトがにじみ出ていた。これまで「ブランドを創る」側だった崎田氏が「ブランドを育てる」側に回る――。代表に就任し、何より大切に考えたのが、この「50年続く重み」だった。

人気の「肉ごぼてんうどん」。資さんうどん八王子大和田店にて”
撮影=プレジデントオンライン編集部
人気の「肉ごぼてんうどん」。資さんうどん八王子大和田店にて

崎田氏が打ち出した拡大戦略は、すかいらーくグループが既に持つ店舗網を最大限活用する「業態転換」が、その中心となる。

全国3000超の店舗を持つ同グループでは、どうしてもお客の競合が生まれてしまう。そこで、例えばガストを資さんうどんに業態転換する。新たな客層が生まれるだけでなく、ガスト目当てだったお客は近隣の店舗に向かう。そうすることで、グループ内の売り上げを活性化できるというわけだ。

年20店は「できるわけがない」と言われた

すかいらーく傘下以前の資さんうどんは、多くて年間10店舗程度のペースで増店だった。それが傘下になった直後の2025年は、年20店舗の出店を行っている。倍のペースだ。

崎田氏自身、こう振り返る。

「当時の出店数で言うと、年間10店舗出すのがMAXで限界だったと思います。そんな中で私が言ったのが『お店20店舗出しますよ』。もう全員が100メートルぐらい去っていきます。『できるわけがない』っていうのが全員の大合唱でしたね」

笑いを交えながら語るが、当時の社内にとっては衝撃的な宣言だった。しかも、当時、組織は単一の文化で動いていたわけではない。

年に20店舗の出店は「できるわけない」と言われたというが、崎田氏には策があった
撮影=プレジデントオンライン編集部
年に20店舗の出店は「できるわけない」と言われたというが、崎田氏には策があった

「資さんで言うと、創業期の大西(章資)さんが熱く育てた人たちがいます。ファンドの時代(※)に入社してきた人たちがいます。すかいらーくになって入ってきた人たち。うちのように3つのチームがいるので、簡単ではないんですよね」

※註 株式会社資さんは、2015年、大西氏の社長退任にともない、福岡銀行系の「福岡キャピタルパートナーズ」が株式を取得。18年、国内独立系プライベート・エクイティ(PE)ファンドである「ユニゾン・キャピタル」が全株式を取得した後、24年にすかいらーくが完全子会社化した。

3つの異なる文化が混在する組織を束ねながら、倍のスピードで店舗を出していく――崎田氏の課題は二重に重かった。