すかいらーくだからできる「業態転換」

鍵を握ったのは、先述した業態転換という戦略そのものだった。

ガストやバーミヤンを資さんうどんに転換するなら、店舗そのものは既にある。店長やアルバイトスタッフも、元いたメンバーに残ってもらえる。テーブルオペレーションに精通した優秀な人財が確保できるうえに、新店をゼロから立ち上げる場合の採用コストや時間も大幅に削減できる。

資さんうどん八王子大和田店も、ガストから業態転換した店舗だ
撮影=プレジデントオンライン編集部
資さんうどん八王子大和田店も、ガストから業態転換した店舗だ

これに、すかいらーくが取り入れていた動画マニュアルの導入や共通言語の統一といった組織インフラを掛け合わせることで、店舗間の品質のばらつきも抑えられる。

「これすかいらーくじゃないとできない出店かなと思います。もちろん、資さんが持つブランド力、人材、支えてくださっているお客さまあってのことではあります」

3000店超の既存店舗網を持つからこそ取れる戦略だ。自前で店舗網を構築することなく、グループ全体の収益構造そのものを組み替えていく。「そんなことができるのか」と言われた異例の出店数は、こうしてしっかりと実現したのだ。

DXは差別化にならない

ハイペースの出店でも、崎田氏は、資さんうどんが持っているアナログな雰囲気を意図的に残している。

資さんうどんではデジタルによる自動化・省力化がなされているが、すべてがそうなっているわけではない。

筆者は、東京1号店となった両国店を訪れてみた。入店時の声かけと退店時の挨拶は人が担う一方、席への案内や注文はモニターと自動アナウンスで完結する。

興味深いのは、スタッフがうどんを運んできた際、「当店は初めてですか?」と聞いてきたことだ。彼女はセルフのかけ放題トッピングの説明をしてくれた。会計はレジでスタッフが対応だった。「ここはデジタル」「ここはアナログ」のメリハリを強く感じた。

この意図について、崎田氏は「もはやDXは差別化にならないんです」と言う。

「飲食店は食事をするだけの場所じゃない。お腹を満たすだけなら、出来合いのものを買って食べればいいだけですよね。DXは推進しつつも、入店時の一言や帰りのあいさつといった、今まで資さんうどんが大切にしてきた雰囲気は残す。今後、さらに飲食店の自動化が進んだ時にそれが大きな差別化になると考えています」

「昔、海外で完全無人のレストランに行きました。入店から注文、配膳、下膳、会計まであらゆることが自動化されて、人間との接点なく食事を完結できる。すごいけど、これはまた来たいとは思いませんでした。やっぱり、どれだけ“人”が大事か実感できた体験でした」