名刺にある情報以外の自分を語る
とはいえ、人は社会的な生き物です。家庭、学校、地域、職場など、さまざまな共同体に所属しなければ生きていくことができません。
大事なことは、そこで「何を背負わされているか」ではなくて「どのような自分として関わりたいか」を自分の意思で決めているかどうかです。
新しく出会った人に対して、あるいは久しぶりに会う人に対して、自分をどう説明するのか。
静かな時間の中で見つめ直し、アップデートしていくことは、自分を外側(会社・役職など)からではなく、内側(価値観・関心など)から位置づけ直すための、とてもよいエクササイズになります。
ここをサボってしまうと、「自分はこの会社の、この部署で、この役割をしている人間です」といった、他人から与えられた役割だけでしか自分を語れなくなってしまいます。それはあなたそのものではなく、あなたの名刺に書かれた情報です。
自分の興味関心や専門性も添える
ここで少し、私自身の話をさせてください。私は20代の頃、まわりの同年代が次々と就職していくなかで、大学院に残って研究を続けていました。
みんなは給料をもらい、出世の階段を上り始めている。一方、私は学費を払いながら、学生証を持ち続けている。引け目を感じてもおかしくない環境でした。
それでも私は、「大学院でワークショップの研究をしています」という自己紹介にこだわっていました。ワークショップを研究し、その専門家であることは、自分にとってのプライドであり、アイデンティティだったからです。
他人からどう見えるかより、「自分はこういう人間として社会にいたい」という意思表明として、この自己紹介を選んでいたのだと思います。
その後、32歳でMIMIGURIという会社を起業し、ベンチャー企業の経営者になりました。しかし心の中では、「経営者です」「MIMIGURIの社長です」と名乗ることに、強い違和感がありました。
そこでしばらくの間、このように自己紹介していました。「会社を経営しながら研究しています」「研究者であり、経営者でもあります」
さらに、「経営と研究を往復しながら、集団の創造性や問いのデザインを探究しています」といった具合に、自分の興味関心や専門性も添えるようにしていました。

