業務効率を上げても忙しさが変わらないのはなぜか。多くの企業で組織開発を手がけてきた経営者の安斎勇樹氏は「忙しい人ほど、外部からの雑音である『ソーシャルノイズ』に影響されている。まずは自分だけの『静かな時間』を作れるような余裕を持ったほうがよい」という――。

※本稿は、安斎勇樹『静かな時間の使い方 自分の解像度を上げる「独りの思索」の全技法』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/Kitinut
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「静かな時間」を確保する具体的戦略

まずは、ソーシャルノイズ(=私たちの思考と行動を縛る、外部の規範・評価・期待)から逃れて、「静かな時間」をうまく使えるようになることを目指したいところです。「静かな時間」を以下のように定義しておきましょう。

静かな時間=外部の規範・評価・期待からいったん距離を取り、役割や義務を一時中断した状態

「いったん」「一時」という言葉を使っているのは、この社会で生きていく以上、市場や共同体から完全に逃れることは現実的では無いからです。

しかしそこに埋没していては、自分の主体が外部に奪われてしまう。少しの間でもいいからノイズへのリアクションを宙吊りにして、背負っていた役割や義務を肩から下ろす。自分自身の声に耳を傾けられる状態を整える。これが「静かな時間」の意味するところです。

とはいえ、そもそも時間に余裕がまったく無ければ、「静かな時間」を捻出するのは難しいでしょう。静かな時間をうまく使うには、まず静かな時間を「確保」しなければいけません。

その意味で、いわゆる「生産性」を上げるための「時間術」のノウハウの類は、参照する価値があります。時間の使い方が下手で、ムダな作業ばかりやっているよりは、効率を高めて仕事を早く終わらせたほうが、そのぶん静かな時間にあてることができるからです。

時間確保のために活用したい「時間術」

本記事の主題ではないので深掘りはしませんが、書店に行けば大量の時間術の本が並んでいます。それらを参考にしてもらえばいいでしょう。

私がざっと見たところ、メッセージは結局、6つぐらいに集約されるようです。

① 有限性の認識……人生の時間は限られていることを自覚し、行動をうながす
(具体例)「人生は4000週間しかない(注1)」、残りのキャリアでやりたいことを考えるなど
②選択と集中型……限られた時間を何に使うか、絞ってそれに集中する
(具体例)重要度×緊急度マトリクス、やること・やめることリストなど
③時間割・スケジューリング型……いつ・どのくらいの時間を割り当てるかを決める
(具体例)タイムブロッキング、ポモドーロテクニック(注2)、朝活など
④習慣化・仕組み化型……意志力に頼らず、ルールや仕組みで行動を自動化する
(具体例)ルーティン化、習慣形成アプリ、リマインダーなど
⑤注意力・集中力型……限られた認知リソースを守り、密度を高める
(具体例)通知オフ、SNS断食、瞑想、個室作業ブースなど
⑥外部化・委任型……すべて自分でやらず、誰かに思い切って任せる
(具体例)外注、権限移譲、チーム活用など

注1:オリバー・バークマン(2022)『限りある時間の使い方人生は「4000週間」あなたはどう使うか?』かんき出版
注2:25分間の集中作業と5分間の短い休憩を繰り返すことで集中力と生産性を高めるテクニックのこと