筋肉量・筋力の低下が「QOL」に影響
サルコペニアとは、加齢などの影響で筋肉量と筋力が低下した筋肉の疾患です。筋肉量と筋力のピークは20~30代で、加齢とともに徐々に低下していきます。その他に、入院中のベッド上での安静などで体を動かさないこと、食事摂取量が不足していること、炎症を伴う様々な疾患によっても低下します。
これらの結果でなるのが、サルコペニアです。サルコペニアが全身の筋肉に生じれば寝たきりに、舌やのどなど口から食べることに関わる筋肉に生じれば摂食嚥下障害に、横隔膜など呼吸に関わる筋肉に生じれば呼吸障害になります。サルコペニアと健康に関連したQuality Of Life(生活・人生の質、QOL)の関連をみた研究では、サルコペニアがあるとQOLが明らかに低下します(※5)。そのため、サルコペニアの予防と治療は、健康寿命と幸福寿命の両者をのばすのにとても重要なことがわかります。
サルコペニアの診断は、2025年11月に公開されたアジアのサルコペニアのワーキンググループであるAsian Working Group for Sarcopenia(AWGS)2025の基準で行います(※6)。AWGS2019という以前のバージョンでは、低筋肉量に加えて低筋力もしくは低身体機能がある場合にサルコペニアと診断していました。しかし、AWGS2025では低筋肉量+低筋力の場合にサルコペニアと診断します。身体機能はサルコペニアの診断基準には含まれなくなりました。
ペットボトルのふたが開けにくい人は要注意
フレイルとは、加齢などの影響で身体機能を支える恒常性維持機構(ホメオスタシス)が低下して、ストレスに抗う力が低下し健康障害が生じるような状態です。
フレイルには、身体的フレイルの他に、精神・心理的フレイル、認知的フレイル、社会的フレイル、オーラルフレイルなどがあり、筋肉に限定したサルコペニアより幅広い概念です。日本語のフレイルは、健常な状態と寝たきり・要介護の状態の、中間の状態を指します。また、フレイルの前段階としてプレフレイルという段階があります。地域在住高齢者でフレイルと健康に関連したQOLの関連をみた研究では、フレイルだとQOLが明らかに低下します(※7)。そのため、フレイルの予防と治療も、健康寿命と幸福寿命の両者をのばすのに重要です。
身体的フレイルは、改訂J-CHS基準で診断します。改訂J-CHS基準を図表1に示します(※8)。体重減少、倦怠感、握力、歩行速度、活動量の5項目のうち、3項目以上に該当した場合に身体的フレイル。1~2項目に該当した場合には身体的プレフレイルとなります。歩行者用信号の多くは、1m/秒で歩けば渡りきれるように設定されています。そのため、歩行者用信号が青のうちに横断歩道を渡りきれずに信号が赤になってしまう場合には、歩行速度が遅い可能性が高いといえます。
握力は、測定器がないと、正確な数値はわかりませんが、ペットボトルのふたが以前より開けにくくなるなど、日常生活での変化を意識してください。
ちなみに私は改訂J-CHS基準の1項目に該当しますので、身体的プレフレイルだと自覚しています。
参考文献
5) Beaudart C, et al.: Sarcopenia and health-related quality of life: A systematic review and meta-analysis. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2023;14(3):1228-1243.
6) Chen, LK, et al. A focus shift from sarcopenia to muscle health in the Asian Working Group for Sarcopenia 2025 Consensus Update. Nature Aging 2025.; 5 : 2164-2175
7) C rocker T F, et al .: Quality of life is substantially worse for community-dwelling older people living with frailty: systematic review and meta-analysis. Qual Life Res. 2019;28(8):2041-2056.
8) Satake S , Arai H . Therevised Japanese version of the Cardiovascular Health Study criteria (revised J-CHS criteria). Geriatr Gerontol Int. 2020; 20: 992-993

