一流の選手は「首を振る」

まず「認知」です。これはボールだけを追うのではなく、ピッチ上の「情報」をどれだけ正確に集められるかという力を指します。

一流の選手は、ボールがくる前に何度も首を振ります。

味方の位置、相手のプレスの角度、そして「ハーフスペース」の空き具合など、彼らは目で見ているのではなく、脳内でピッチの3Dマップを更新し続けています。

次に「判断」です。認知で取得した情報を元に、一瞬で「最適解」を選ぶ力を指しています。

グラウンドでサッカーをする人たち
写真=iStock.com/PeopleImages
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「今は自分が囮になって走るべきか」「それとも、ここでパスを受けて相手を引きつけるべきか」。選手は、そうした選択を常に迫られています。

認知によって取り入れた情報や、練習の中で培った味方との連携、さらには味方選手の現在の状況や、事前分析によって把握した相手チームの戦術やプレー傾向を踏まえ、戦術的に正しい判断を下せる選手がいれば、チームは自ずと「数的優位」の状態へ導かれます。

名パサー・遠藤保仁と中村憲剛の共通点

そして、最も重要なのが「移動(ポジショニング)」です。

足元の技術以上に、「いつ、どこに立っているか」がゲームの勝敗を分けると言っても過言ではありません。

例えば、相手ボランチの視野からフッと消えるような位置取りをする。味方のパスコースを作るためにあえて50センチだけ横にずれる動きをする。このような些細な移動やアクションでも、相手選手から一歩またはすぐには届かない位置にまでずれることができれば、一気にチャンスになります。

こうした「移動の質」が高い選手は、ボールを持っていない時間すらも相手を破壊し続けます。これを私は「動的な質的優位」と呼んでいます。

2015年以降、Jリーグではトラッキングデータが採用され、選手の移動距離やスプリント回数などがリーグ公式サイトなどに表示されるようになりました。

遠藤保仁氏、中村憲剛氏、青山敏弘氏など、ワールドカップメンバーにも選ばれたことがあるような国内屈指の名パサーと呼ばれる選手たちこそ、試合中に他選手よりも多く走っていることが証明されました。

彼らはピッチ上で首を振り続けながら、敵味方問わず情報をアップデートし続けて認知・判断を繰り返します。そして絶えず移動することで、味方とのパス連携を行える場所や、相手選手に奪われない立ち位置を見つけていたことがわかります。

「認知・判断・移動」に優れた選手が1人いるだけで、戦術は魔法のように回り始めます。これからは、派手なフェイントだけでなく、ボールがくる前の「首振り」や、パスを出したあとの「5メートルのスプリント」に注目してください。そこにこそ、現代サッカーが到達した「個の力」の真髄が隠されています。