習近平が持ち出した「ツキディデスの罠」

――先の米中首脳会談で、習近平主席は「ツキディデスの罠」を持ち出したと報じられていますが、どういう意図があるのでしょうか。

【千々和】「ツキディデスの罠」は古代のスパルタとアテナイの戦いにおいて、アテナイの台頭をスパルタが恐れたためにペロポネソス戦争が起きたというツキディデスの『戦史』の指摘に基づくものです。これにアメリカの政治学者であるグレアム・アリソンが注目し、「覇権国が衰退し、挑戦国が伸びてくると、両者の間で戦争が起きるケースがある」として、これを「ツキディデスの罠」と呼びました。

習近平はこの話を何度も引用しているようなのですが、これは中国側から見れば「アメリカが弱ってきて中国が台頭してきた際に、アメリカが覇権交代を恐れると中国との間で戦争を起こしかねない。だから戦争にならないように、アメリカは何もしない方がいいですよ」というメッセージを警告していると見るべきでしょう。

「覇権国と挑戦国の間で戦争にならないようにするためには、挑戦国の現状変更にも目をつぶった方がいい」という形の、中国にとって都合のいいロジックとして利用されかねないことに注意が必要です。

あくまでも日米が求めているのは現状維持であり、力による現状変更は許さないと言っているのだということ。加えて日本は軍国主義化しているのではなく、あくまでも抑止の姿勢を取っているのだということは、繰り返し国内外で説明する必要があります。

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