日本が対中国の最前線になる
――戦前の日本は、台湾や朝鮮半島が地政学的な要衝地であるとしてグリップを効かせる必要があると考えました。2026年の現在も地政学的な要素は変わらないということですか。
【千々和】戦後のアジアの冷戦にしてもここが発火点でした。戦後まもなくは、アメリカは日本とフィリピンを内側とするいわゆる「アチソンライン」を引き、この内側について防衛責任を負うとしていました。そのため、韓国と台湾はその外側にあったのですが、朝鮮戦争が起きたために最前線が38度線に移り、さらにアメリカが台湾海峡に第7艦隊を派遣したことで、朝鮮半島と台湾がアメリカの防衛ラインの内側に入ることになりました。
これは冷戦終結後も変わることなく、いわば朝鮮半島と台湾が、アメリカが影響力を行使する範囲の最前線になっていたのです。韓国は在韓米軍基地を持ち、台湾には台湾関係法を制定して武器を供与する。その背後に在日米軍基地があり、最前線を支えているという格好になっていました。
もしアメリカが台湾を守らないということになれば、アメリカの防衛責任はアチソンラインまで後退する可能性があります。韓国についても後退するかは分かりませんが、少なくとも中国正面に関して、仮に台湾がアメリカの防衛責任の外側になるということであれば、今度は日本自身が最前線になる。このことを重々考えなければなりません。
「アメリカの戦争に巻き込まれる」の誤り
――日本でも台湾有事への関心は高まっていますが、有事を抑止するための備えの必要性が「中国を挑発している」と捉えられたり、「アメリカの戦争に巻き込まれたくないから戦争の準備などやめるべきだ」という理由で反発を受けてもいます。
【千々和】あるいは「日本が軍国主義化する、日本が戦争を起こすのを止める」という議論ですよね。現状、台湾有事は中国が台湾に侵攻したり海上封鎖を行ったりして初めて起きるものを指します。そのため本来であれば「戦争やめろ」は中国に言うべきだと思いますが、そうではない理解をしている人もいるようです。
また、日米関係における「アメリカの戦争に巻き込まれる」ことへの危惧は以前からありますが、現在のアメリカはむしろ「台湾は日本のご近所で、有事が起きたらまずは日本の問題なのだから、自分たちで何とか出来るようにしておくべきだ」と言いかねない状況です。そのため、ヨーロッパでもアジアでもアメリカの同盟国が気を揉んでいるのはアメリカが地域から退いていくのではないか、という点です。
また、現状変更を企図しているのは明らかに中国やロシアです。イランに対してはアメリカも攻撃的な姿勢を取りましたが、少なくともアジアにおいてアメリカが中国相手に先制攻撃を加えることはあり得ない。アメリカと日本が取っているのはあくまでも防御的な姿勢であり、いわば抑止を行っているわけです。

