台湾危機を見過ごすことが平和主義なのか

このあたりの理解も進んでいない面がありますが、振り返れば30年前に自衛隊がPKOで海外に派遣されるとなった際にも「日本が軍国主義化する」「地球の裏側まで戦争をしに行く」という反対の声がありました。

1997年に日米ガイドラインを改定した際も、1999年に周辺事態法が、2015年に安保法制ができたときも、同様に「日本が軍国主義化する」と言われていました。で、現状はどうなっているか。

何か新しい動きがあるたびに反対派は「軍国主義化」を持ち出して来ましたが、結局日本は軍国主義になったのでしょうか。

――高市総理の存立危機事態発言以降、中国は日本を「ネオ軍国主義」などと名指ししています。日本国内からの「軍事大国化危惧」の認識は中国のプロパガンダに利用されそうです。

【千々和】現状変更を企図しているのは明らかに中国の方で、硫黄島の東まで空母を派遣し、領空侵犯も繰り返しています。さらには台湾という、国ではないかもしれないけれども民主主義を確立して総統を選挙で選んでいる共同体に対し、武力による侵攻をも辞さないと公言しているのが中国です。これを見過ごすことが平和主義なのでしょうか。

夕食会の習氏 中朝、関係発展へ「新章」
写真=朝鮮中央通信/共同通信社
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との夕食会に臨む中国の習近平国家主席=2026年6月8日、平壌

「戦争反対」が戦争を助長する皮肉

中国から見れば、集団的自衛権行使違憲論や、日本の防衛力強化を軍国主義化と見なすような論調は、まさに「付け入りやすい部分」になります。

中国は日本国内の反米主義や反基地運動を利用して自国に有利な状況を作り出そうとするでしょうし、中国がいざ台湾への侵攻を開始するとなれば、日本からは「台湾のために日本が危険にさらされる必要はない」「すぐに白旗を上げて人命を守るべきだ」との声も上がるでしょう。

こうした声は「戦争反対」の思いから生じているものだとは思いますが、結果的に中国の現状変更に手を貸すことになり、中国を利することになります。自分たちの議論が、中国からどのように見られているかということも意識しなければ、かえって戦争を助長することにもなりかねません。

現状ではアメリカのコミットメントに疑念が生じていること、またアメリカ自身が国際秩序や国際法を軽視していることは事実ですが、だからと言って「もうアメリカとの付き合いはこれまでだ」と言って離反してしまえば、地域の安定をはかるのはより困難になります。何とかアメリカをこの地域に関与させておく必要がありますし、そのために日本自身が主体性と自主性をもって責任を果たす姿勢を見せなければなりません。