日本の食塩の目標値は甘すぎる
高血圧は「世界一の殺し屋」といえるほど多くの病気にかかわっていて、高血圧を引き起こす最大の原因が食塩です。日本では高血圧の人の10 人中9人が「食塩高血圧」だと、私は考えています。
日本高血圧学会は、食塩摂取量の目標として「1日6g未満」を掲げています。
ところが、この目標値は、世界を見渡してみるとずいぶん甘いのです。
WHO(世界保健機関)や欧州の高血圧学会、心臓病学会は、「1日5g未満」を目標としています。
アメリカはさらに厳しく、米国心臓病学会・米国心臓協会の目標値は、「1日3.8g未満」です。なぜ3.8という中途半端な数字なのかといえば、理由は単純明快で、3.8g未満に減らせば血圧が下がるという明確な科学的根拠があるからです。
例えばDASH研究という、2001年に発表されたアメリカの有名な研究があります(※2)。この研究では、1日の食塩摂取量を、平均8.3gから5.8gに減らすと血圧が下がり、さらに3.8gまで減塩するともっと血圧が下がりました。
血圧が大きく下がる1日3.8g未満を目指す
一方、日本の「6g未満」という基準はというと、根拠はあるものの降圧効果は弱めです。日本高血圧学会としても、減塩すればするほど血圧がより下がることはわかってはいるものの、日本人の現状を考えると1日3.8g未満を達成できるとはとても思えない。
そうであればまずは、1日6g未満でどうか――。
そんなふうに、日本人らしい思いやりで決まった目標値のようです。
2025年に高血圧の治療ガイドラインが改訂された際、日本の減塩目標も改められるのではないかと淡い期待を抱きましたが、変わりませんでした。なぜアメリカのように厳しくできないのかといえば、現状の6g未満という目標でさえ達成できていないからです。
ただし、日本の治療ガイドラインでも、「食塩摂取量を6g/日より下げることで、血圧のさらなる低下が期待できる」ということはハッキリ書かれています(※3)。
血圧が大きく下がり、高血圧を予防できるという明確なエビデンスがあるのが1日3.8g未満なのです。そうであれば、1日3.8g未満をめざすほうが本来は理想的だと私は思います。
※2 DASH-Sodium Collaborative Research Group. Effects on blood pressure of reduced dietary sodium and the Dietary Approach to Stop Hypertension(DASH)diet. N Engl J Med 2001: 344: 3-10.
※3 日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会[編]『高血圧管理・治療ガイドライン2025』ライフサイエンス出版、2025年


