減塩30%のお菓子を食べる必要性はあるか
ところで、先日、日本高血圧学会に参加したところ、企業が、減塩バージョンのせんべいなどのお菓子を紹介していました。各ブースに並べられた商品を見ていると、減塩の割合が30%以上のものはほとんど見当たらなかったので、ブースの担当の方に「50%カットにはできないのですか?」と尋ねてみました。
すると、どの企業の方からも共通して返ってきたのが、「元の商品と味が変わってしまうから、できないんです」という答えでした。味が変わらない範囲で最大限に減塩した商品が、30%カットだったのです。
消費者の健康のために食塩量を減らしつつもおいしさは損なわないようにという企業努力には頭が下がりますし、減塩バージョンを選んで購入する方も健康を意識されていてえらいなと思います。
ただ一方で、そこまでしてしょっぱい味を求めなくてもいいのではないか、とも思うのです。
健康のために減塩や低糖質バージョンを選ぶのであれば、もう一歩考えを進めて、そこまでしてその嗜好品を食べなければいけないのか、ちょっと立ち止まって考えてみてください。
高血圧は「世界一の殺し屋」だった
血圧が多少高くても、体が痛むこともなければ、つらい症状に見舞われることはほとんどありません。
そのため、高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれることがあります。「静かなる殺し屋」です。
ただし、高血圧は、自覚症状なく静かに忍び寄る殺し屋というだけではなく、実は「世界一の殺し屋」でもあります。
「Global Burden of Disease Study(世界疾病負荷研究)」という有名な研究があります。
世界中の国と地域を対象に、何が寿命を縮め、健康状態を悪化させているのかという健康課題を明らかにするための研究です。
この2001年のデータによると、世界中で約5600万人が亡くなっていて、そのうちの約760万人が高血圧によって命を縮めていました。命を縮める要因はさまざまありますが、ダントツに多かったのが高血圧だったのです。
この世界疾病負荷研究の結果は数年おきに発表されていて、最新のデータでも、高血圧が最大のリスク要因であることは変わりません(※1)。
高血圧があると、まず血管が傷つき、動脈硬化が進みます。
そうすると、心筋梗塞をはじめとした心臓病、脳梗塞や脳出血などの脳卒中のリスクが上がります。また、脳卒中によって起こる血管性認知症にもなりやすければ、腎臓病のリスクも高まります。
腎臓の働きが低下する原因はいろいろありますが、その6割を占めるのが糖尿病と高血圧です。6割のうちの3分の2が糖尿病、3分の1が高血圧です。腎臓の働きが低下すれば、いずれ人工透析が必要になるわけですが、その背景にも高血圧が隠れているのです。
ほかにも、心臓から血液を送る大動脈で動脈硬化が進むと大動脈瘤や大動脈解離の原因になり、目の血管がもろくなると網膜症などを引き起こし、失明することもあります。
このように、命にかかわる病気や生活の質を著しく下げる病気の大きな原因が高血圧なのです。逆にいえば、高血圧を予防することは最大のリスクヘッジになるということです。
※1 Burden of 375 diseases and injuries, risk-attributable burden of 88 risk factors, and healthy life expectancy in 204 countries and territories, including 660 subnational locations, 1990-2023: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2023.Lancet. 2025 Oct 12; doi: 10.1016/S0140-6736(25)01637-X. Epub 2025 Oct 12.

