無塩食の効果が確認できた半世紀前の研究

逆に、アルドステロンがどんどん出てしまう「原発性アルドステロン症」という病気もあります。レニンが増えれば最終的にアルドステロンも増えるというのが本来の順序ですが、原発性アルドステロン症の人は、レニンに関係なくアルドステロンが勝手にどんどん出てしまうので、ナトリウムを過剰に再吸収して、血圧が高くなってしまうのです。

アルドステロンをどんどん作ってしまう人もいれば、少し多めに作るくらいの人もいて、程度の差はありますが、高血圧の人の10人に1人に原発性アルドステロン症が隠れているといわれています。

では、それ以外の10人中9人の方はというと、ナトリウムのとりすぎで血圧が高くなっている「食塩高血圧」の可能性が高いのです。

ハートモチーフに塩をかける
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そのことを裏づける、とても興味深い論文があります。

終戦から3年後の1948年に、高血圧の患者さん約500人を対象に、アメリカの大学で行われた臨床研究です。当時は高血圧の薬がまだ何もなかったので、高血圧の患者さんを入院させて低ナトリウム食を食べてもらいました。

当然、食塩は使わず、食材のナトリウムだけです。食塩相当量で1日0.4g程度でしたから、かなり厳格な低ナトリウム食でした。

その結果、どうなったと思いますか?

血圧が220mmHgくらいあった人たちが、軒並み120程度にまで下がったのです。

「無塩」食にすることで重症の高血圧がよくなったという事例は、半世紀以上も前にすでに報告されているのです。

尿中に捨てられている「とりすぎた食塩」

腎臓は、アルドステロンなどのホルモンを駆使しながら、ナトリウムを必要な分だけ再吸収し、必要ない分は尿に捨てています。つまり、尿に含まれるナトリウムは、食事でとりすぎた、体にとって不要なナトリウムです。

私の外来では、高血圧の患者さんに減塩指導を行う際は、尿中に出てくるナトリウムの量を調べます。尿中のナトリウム量を調べることで、1日にどのくらいの食塩をとっているのか、とりすぎているのかがわかるからです。

尿にどのくらいのナトリウムが出ているのか、食塩排泄量を測定する方法は、主に2通りあります。

1つは、スポット尿といって、あるタイミングで一度、尿を採取し、計算式をもとに1日の食塩摂取量を推定する方法です。随意尿とも呼ばれます。

もう1つは、24時間蓄尿です。1日分の尿をすべて集めて、ナトリウム濃度を測定することで、1日の食塩摂取量を調べます。

24時間蓄尿は、排尿のたびに蓄尿器にためなければいけません。一方、スポット尿は、一般的な健康診断と同じで、一度の採取でいいので手軽ですが、正確なデータが得られるのはやっぱり24時間蓄尿のほうです。

以前に、スポット尿と24時間蓄尿で同時に測定し、どのくらいの差が生じるのか実験したことがあります。そうしたら、24時間蓄尿では1日の食塩摂取量は2g台なのに、スポット尿では6gや9gと推定されてしまったり、24時間蓄尿で5g台の人が8g、9gと推定されたり、バラつきがありました。

1日分の尿を採取するのは面倒ですが、正確に知るには24時間蓄尿がいちばんです。

1日にどのくらいの食塩をとっているのか、患者さん自身にちゃんと自覚していただきたいので、私の外来では、ユリンメートPという、採取した尿を正確に50分の1ずつためる携帯用の蓄尿器を使って、1日の食塩摂取量を調べています。