「精神的に自立した領域」を持てているか
【田中】ただ現代は、直接的な知り合いだけじゃなくて、実際に会ったことはないのに一応は知り合いであるという「薄い関係」も、増えているようです。SNSを開けば、そうした薄い知り合いの意見や感情が、いくらでも目に飛び込んでくる。
それによって人の命が救われることだって多くあるだろうし、寂しさが紛れることもあるだろうから、もちろんいけないことばかりではありません。それでもやはり私は思います。人というのは基本的にひとりで生きて、ひとりで死んでいくものだと。その厳粛な事実からは逃れられない。
人と一緒にいるときでも、自分の中で独自に考えていることがちゃんとありますか、というところを私は重視したい。物理的にひとりであるかどうかよりも、精神的に自立した領域を持っているかどうか。それを指して私は孤独と言っているし、そういう孤独の状態を失くしてしまってはいけないんじゃないかと主張したいです。
「自分とは何なのか」を考えるために必要なのが孤独です。孤独をちゃんと内に抱えていないと、他者と交わることも難しくなってしまうんじゃないかと私には思えます。自分という個がないままにつながっても、それは単なるデータの送受信になってしまうのではないかという危惧があります。
【落合】田中さんは「孤独の領域」をどう確保していますか。朝起きてから寝るまで、どんな生活をされているのですか。
【田中】私は夜型ではないので、朝起きてまずは適当に食事をして、テレビでニュースを見たりします。世の中の動きは一応知っておこうとします。スマホを持たないからといって、世間と隔絶しているわけではありません。午前中は本を読んだり、ダラダラしたり、短い仕事をしたりして過ごします。
お昼を食べて、本格的に原稿に取りかかるのは午後です。そこからひたすら机に向かい続ける。そんなに筆がスルスル進むということもないのですが、午後五時だか六時だかまで仕事をしたら、あとはもうお酒を飲んでしまう。そんな毎日を過ごしています。

