「わかりやすさ」ばかりを求めずに

【田中】ひとつだけ言えるとしたら、これまで本を読むことだけはしてきたし、これからもするでしょう。これからの時代はとくに、本は意図的に読んでおいたほうがいいのではないかと思います。インターネットで拾える断片的な情報ではなく、一冊の本という体系だった思考の塊に触れること。本を読むことで培われるであろう体力が、思考の足腰をつくってくれます。読書はだれにとってもおすすめできるものだと思います。

田中慎弥・落合陽一『堕落論 住めば都のディストピア』(徳間書店)

せっかくなら古典を読んだほうがいい。古い翻訳ものなんかだと、ずいぶんおかしな日本語になっている場合もあります。いわゆる「翻訳調」と呼ばれる文体ですが、それはそれでおもしろい。そのヘンな日本語に、異物としての言葉の手触りがあるからです。だから「よくわからない……」と思いながら、たとえば『源氏物語』などの古典を古文のまま読むのもいいと思います。

現代を生きる私たちはとかく「わかりやすさ」を求めますが、わからないものをわからないまま抱えておく力も大切です。小説に関しては、わかりやすいものだけを読んで訳がわからないものを捨てるというのはもったいない。「何だこれ?」と言いながら読み進めるのも有意義な行為です。

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