なぜ外国人は日本で寿司を食べたがるのか
前節で述べたように、寿司は老若男女、国を超えて好まれる料理です。そしてその「国を超えて」の部分こそ、今まさに寿司ビジネスが注目すべき重要なところでしょう。
では、なぜ多くの外国人が「日本で寿司を食べたい」と願うのでしょうか。その背景には、魚介類消費の世界的な伸び、和食文化のグローバル化、そして「本場」日本への信頼と憧れが複合的に作用しています。
まず、魚介類そのものの消費量が世界で伸びているというマクロな潮流があります。FAO(国際連合食糧農業機関)の報告によれば、世界の一人あたり魚介類消費量は20キロ/年を超える水準に達したとされています。
また、養殖による生産が漁獲による生産を上回る動きも出ており、魚介を主たる食品として捉える文化が、かつてないほどに普及してきています。こうした魚食拡大の流れの中で、「魚を生で」という寿司の形は、国際的な食トレンドとも親和性が高いといえます。
次に、健康志向の高まりと、和食のユネスコ無形文化遺産への登録が、和食及び寿司の世界的注目を後押ししました。
和食が「体に良い」「自然との調和を感じる」「美しい盛りつけ」というイメージを伴って評価されるようになり、特に欧米の富裕層・セレブリティの間では「和食=洗練された選択肢」として取り上げられることが増えました。
その代表格として、寿司は自然と「和食の顔」となり、世界の食通・グルメ市場において重要なポジションを占めるようになったのです。
海外の寿司を知っているからこその驚き
さらに、寿司の海外普及の歴史を見ると、まずアメリカから始まったこともあり、その動きが顕著でした。
ハンバーガーやピザ、フライドポテトといった“ジャンクフード”が日常食として根づいていたアメリカにおいて、「魚を焼いたり揚げたりせず、生や締めて食べる」「脂が控えめで、酢飯なども含めて軽めの印象」という点が、“ヘルシー志向”の受け皿になりました。
つまり、寿司は「ジャンクではない」「軽くて健康的」という新しい選択肢を提示し、外食文化の中で確実に存在感を増しました。その流れが欧州やアジアにも波及し、寿司はヘルシー・スタイリッシュな食という位置づけを獲得します。
しかしながら、ここで興味深いのは、海外で食べる高級な寿司でさえ、必ずしも“本場・日本水準”とは言えない現実です。
価格が日本より高く設定されているケースがあるにもかかわらず、ネタの鮮度やシャリ、魚の種類、技術の水準において、日本で味わえるものと比較すれば洗練度に差があることが少なくありません。
知人から聞いたウワサでは、カナダで一貫23カナダドルもする寿司を食べていた人が、日本の回転寿司を訪れて一皿100円(つまり、一貫50円)の寿司を食べたところ、「今まで食べていたSushiは、何だったんだ⁉」という感想を口にした、という話もあるほどです。

