ナイキの厚底で2時間0分25秒
サブ2の達成はまだまだ先の未来かと思われたが、ひょっとするという可能性が見えてきた。その野望を本気で実現しようとしたスポーツメーカーがある。それがナイキだ。
2017年5月、フルマラソンで2時間切りを目指す「BREAKING2」という特殊プロジェクトを開催したのだ。スピードダウンを抑えるために鋭い曲がり角の少ない1周2.4kmのサーキット場で行われ、3人の挑戦者に対して、ペースメーカーを合計30人ほどスタンバイ。選手たちを向かい風から徹底ガードしながら、絶妙なペースでレースは進んだ。
2時間を切るには当時の世界記録(2時間2分57秒)と比較して、マイル(1.6km)ごとに7秒短縮しなければいけなかった。無謀なチャレンジかと思われたが、前年のリオ五輪の男子マラソンで金メダルを獲得したエリウド・キプチョゲ(ケニア)が2時間0分25秒で走破。2時間切りは果たせなかったものの、当時の世界記録を2分半近くも上回り、世界中のファンを驚かせた。
そのときキプチョゲらが着用していたのが、後に世界のマラソンを席巻することになるカーボンプレート搭載の厚底シューズだった。
当時32歳だったキプチョゲは、「良い準備と計画があれば、あと25秒はいけるだろう」と豪語。その言葉通りのことが実現する。
2019年秋、非公認だが2時間切り達成
2019年10月の特別レースで1時間59分40秒をマーク。非公認ながら人類初の“2時間切り”を達成した。
キプチョゲは公認レースでも金字塔を打ち立てる。2018年のベルリンで従来の世界記録を1分強も縮める2時間1分39秒をマークしていた彼は、2022年の同大会で2時間1分09秒まで記録を短縮した。
箱根駅伝のナイキ着用率95.7%
キプチョゲらが愛用したナイキの厚底シューズはロードレースで信じられない記録を連発。箱根駅伝の着用率は2021年に95.7%に到達した。反発力のある硬質なカーボンプレートを超軽量フォームで挟んだモデルが“シューズ革命”をもたらした。
しかし、ナイキ一強の時代は長く続かなかった。各社が同じスタイルのシューズを開発。そしてナイキを上回るメーカーが登場する。それがアディダスだ。

