アディダス本社が本気で開発
ナイキの厚底よりも超軽量の『ADIZERO ADIOS PRO EVO1』が誕生したのは2023年9月のことだった。それ以来、世界のメジャーレースで3本ラインが輝いた。そして、今回その最新モデルとなる『EVO 3』を履いたサウェとケジェルチャがロンドンマラソンでサブ2を達成したわけだ。
『EVO 3』には最先端のテクノロジーがぎゅっと凝縮されている。中でも特筆に値するのは、過去モデルのいい点を継承しつつも、延長線上で開発改良という戦略を思い切って捨てたことだ。バネとなるカーボンプレートは使用しているが、それをソールの外周部分のみに配置して、推進力と後述する軽量化の両立につなげたと言われている。
ひたすら1秒でも削るための「理想」を追求し、10回以上の試作を重ねたのは、ドイツのヘルツォーゲンアウラッハにあるアディダス本社内のラボだけでない。ケニアやエチオピアの高地キャンプなどでもテストを実施したという。その成果として、前モデルからランニングエコノミー(一定の走速度を維持する際に、どれだけ少ないエネルギー=酸素消費量で走れるかを示す指標)が1.6%UPした。
たった1.6%と思うだろう。しかし、数字は小さいが、42.195kmを走り切るためのエネルギー効率としては極めて高い効果を発揮する。
重量は片足で卵1.5個
ライバル企業が蹴散らすインパクトのあったこのアディダスの新モデルの特徴は何か。やはり、その圧倒的な「軽さ」には驚くしかない。
走りに直結するソール部分の新フォームが劇的に軽くなったことで前モデル比30%の軽量化に成功。重量は、片足97g(27.0cm)しかない。Mサイズの卵でいうと、約1.5個分でしかない。これは前述したナイキが2017年に発売した厚底シューズのファーストモデル(190g/28cm)の60%ほどの重さしかないのだ。
シューズの性能が同じなら、当然、軽いほうが有利になる。コロラド大学の論文(2016年)によると、シューズが片足10g軽くなると0.078%速くなるという。単純計算では、シューズが片足50g軽くなると、2時間12分00秒のランナーなら30秒ほど速く走れるのだ。
マラソンのタイムにとって、その秒数はとてつもない貢献度だ。
20年ほど前と比較すると、レーシングシューズのソールは3倍ほどの厚さになっているにもかかわらず、重量は軽くなっている。これはテルガトやゲブレシラシエらかつての世界記録保持者も想像していなかったシューズの進化だったに違いない。

