若年認知症と認知症の違い
木梨さんは妻を連れて地元の神経内科を受診。問診だけで「年齢が若いので認知症ではないでしょう。心配なら大病院でしっかり検査を受けるといいです」と言われ、それから約半年後、「やっぱりおかしいぞ」と思った木梨さんは、大手総合病院で詳細な認知症検査や、生活機能・行動症状の評価、画像検査(CT/MRI)などを受け、「MCI(軽度認知障害)」と言われ、通院することに。
そして6カ月後、ようやく「アルツハイマー型認知症」と診断された。
「『やっぱりね』という感覚で、正直なところ驚きはありませんでした。ただ、それが進行する病であること、この先、症状、特にBPSDの変化によって険しい道を歩まなければならないことを、当時の私は予想もしていませんでした。知識として持ち合わせていなかったのです。医師からも詳しい説明はありませんでした。そのため、認知症とはこんなにも残酷な病なのだと感じる日々が待っていることを、その時の私はまだ知る由もありませんでした」
BPSD(認知症の行動・心理症状)とは、認知症に伴ってあらわれる徘徊、暴言、幻覚、抑うつなどの精神・行動面の問題で、周辺症状とも言われる。
若年性認知症と認知症には症状に大きな違いはなく、一般的に、65歳未満で発症したものを「若年性認知症」と呼び、65歳以上で発症したものを「認知症」と区別している。
「単なる疲れ」などと勘違いされやすい
ただ、高齢で発症する場合と異なり、年齢的に若いことから、「単なる疲れ」「更年期障害」「うつ病」と勘違いされやすく、専門医の受診が遅れる傾向があるほか、高齢者の認知症より進行が早いケースが多いとされている。
「若年性の場合は体力がある分、BPSDも強くあらわれることがあるのではないかと感じます。老年期に発症する場合と決定的に違うのは、本人も支える家族も『仕事や人生の現役』ということです。認知症と共存しながら仕事や家事をしなければ、生活が成り立たなくなってしまいます。仕事と介護の両立は、決してたやすい課題ではありません」
この頃の妻はまだ介護認定は受けず、同居している次男と3人で日常生活を送っていた。
しかし、認知症の進行とともに、木梨さんの精神的負担は増える一方。だが、大手総合病院では介護者側の相談には十分に乗ってもらえない。
少しずつできないことが増えていく妻を見ていて、どうしても悲観的になってしまう木梨さんは、「誰かに話を聞いてもらいたい」と思うように。

