夫の立ち合い出産にGOサイン
「コロナ禍でしたが、うちは希望するカップルには立ち会い出産を受け入れました。大病院だとほかの科の患者さんの感染症リスクを考慮する必要がありますが、産院ではその必要はありません。カップルの人生にとってかけがえのない大切な出産という出来事で、なるべく希望を叶えて差し上げたいと考えました。『幸せなお産』を実現するための方法だと考えれば、全く難しいことではありません」(杉本代表)
この判断はファミール産院の前進を後押しする成功体験となり、コロナ後も出産件数は増え続けている。2020年には13.8億円だった売り上げも、2025年に56.3億円にまで成長した。
ファミール産院はグループ全体で「年間1万分娩」という大きな目標に向け、着実に実績を伸ばしているが、日本全体を見渡すと少子化が止まらない。その理由は、こどもを産むことでワクワクする絵が見えていないからだと杉本代表は断言する。
「未来に対してネガティブな考えが支配しているのがいまの世の中ですが、仕事も人生もとらえ方がすべて。私は未来がわからなくても、明るいことしか考えていません」
産院を「また戻ってきたい場所」に
各地域でいちばんの人気産院になれるよう、運営するスタッフがワクワクしながらやっていくことが大事だと、自身が企画したイベントを話した。
「産院の駐車場でプロレスのイベントをやりました。地域の人たちはもちろん、うちで出産してくれた人にまた戻ってきて喜んでもらえたらと思ったからです。別の産院では夏祭りや餅つき大会をしました。出産した女性やパートナーにとって、また戻ってきたい場所になれば、またこどもを授かりたいという思いの背中を押すことにもつながるかもしれませんし」
エステをはじめ医療以外のサービスとの組み合わせにも乗り出した。今後はフランチャイズ化による展開の拡大をめざすという。
ひとつの場所で大きな病院を運営し続けることは難しい。そんななか、コンパクトな箱(施設)と仕組みを、ニーズのある場所に分散して展開するファミール産院の手法は、先行き不透明な世の中の空気感にもマッチした、軽やかな経営手法の好サンプルのように見える。
医師の高齢化と出産件数の減少により、事業承継を望む個人経営の産婦人科医院は全国にある。特に産婦人科ゼロ地域の瀬戸際に立たされた自治体にとって、ファミール産院の運営手法から得られるヒントは少なからずありそうだ。

