産院の利益をスタッフに還元すると…
執行役員の北里淳さんが答えた。
「共通のフォーマットで運営し、各施設の売り上げ、経費、利益を透明化して、ほかの産院の数値も見られるようにしています。また、産院ごとに利益をスタッフの人件費に還元する仕組みです。そうすると、本部では順位をつけての表彰など行っていないにもかかわらず、自然と、競争心理が芽生えるようで、電気をこまめに消したりといったコストを意識した行動が生まれました。職員が経営意識を持って産院をよくしていく方向に進んでいっているのです」
もともと船井総研で医療分野の管理職だった北里さんは、ファミール産院の経営に加わり、ほかの病院のコンサルティングも行っている。非医業のコンサルタントを経営に迎えた判断は、杉本代表の経営強化の意志をうかがわせる。
「医療と経営の両方を見ることのできるドクターはあまりいません。開業医でも経営はやりたくないという方は多くいらっしゃいます。ですが、杉本代表は若い頃から経営感覚を持った医師でした」(北里さん)
事業承継を終えた医院の妻は涙した
杉本代表は筑波大学医学群を卒業し、筑波大学病院勤務を経て、2005年、千葉県館山市を開業の場所に選んだ。館山で兄が小児科クリニックを経営していたからだったという。房総半島の南端に位置し、保養地として人気だった時期もある、海と山に囲まれた自然豊かな土地だ。
だが、1980年をピークに人口減少が続き、杉本代表も経営危機を経験した。危機から脱したころ、館山から北へ50キロ、東京湾に面する君津市で2つめの産院を開業する。以後、数年ごとに千葉県内の異なる自治体で開業してきた。地元で産婦人科医院を経営してきた医師から事業承継した医院も2施設ある。
そのひとつは、まずグループに参画し、4年をかけて事業承継を完了する手法をとった。医院で事務を担当していた院長の妻は、ファミール産院の運営システムに切り替わったとき、人事や経理などの負担から解放され、安堵に涙を流した。
ファミール産院の年ごとのお産件数を追っていくと、まず2020年から2021年にかけて、数字が大きく伸びている。
これは、妊婦とそのパートナーに対し、他の産婦人科では受けられないサービスを実施した成果だという。


